(2019年10月30日掲載:2021年2月22日リライト)
リオ五輪男子サッカー日本代表チームは 「2016年U-23アジア選手権チャンピオン」に輝き 「48年ぶりのメダル獲得へ」と期待されたが、リオ・オリンピックの結果は1勝1分1敗で1次リーグ敗退。
リオ五輪の敗因として上げられた点は、
- 国際経験不足
- オーバーエイジ人選
- 守備
- リーダー不在、など
確かにそういう面はあったが、「最大の敗因は五輪世代とOA選手の融合が図れなかった」ことが原因 であると言いたい。それでは、東京五輪金メダル獲得に向けて「リオ五輪の失敗」を活かした取り組みを実行しているのだろうか?
本記事では、現時点までの取り組みを検証。さらに東京五輪開催までに実行すべき大胆なチャレンジを紹介。
- リオ五輪の失敗から学ぶべき3つの改善点
- 改善① チームを立ち上げる時期を早める
- 改善② 国際Aマッチデーに強化を行う
- 改善③ オーバーエイジ(OA)の融合を早める
- 東京五輪金メダルに向けてのチャレンジ
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- おわりに
リオ五輪の失敗から学ぶべき3つの改善点
リオ五輪失敗から学ぶべき3つの改善点を指摘した記事(飯尾篤史氏)を見つけた。彼が語った改善点とは、
- チームを立ち上げる時期を早める
- 国際Aマッチデーに強化を行う
- オーバーエイジの融合を早める
これらは私が考えるに、まさに「戦略面の改善」。リオ五輪戦略がしっかりしていたなら当初の目標「48年ぶりのメダル獲得」は達成できていたであろう。
それでは指摘された点の検証、そして残すところ5カ月となった東京五輪に向けての前代未聞のチャレンジを紹介したい。
改善① チームを立ち上げる時期を早める
これは五輪代表監督就任時期を指摘している。
- リオ五輪の開催は2016年8月。手倉森氏が監督に就任したのは2014年1月2日。最初の指揮は2014年1月のAFC U-22選手権。指揮した期間としては2年6カ月
- 東京五輪では森保氏が2017年10月30日に五輪代表監督に就任(その後フル代表監督を兼務)。最初の指揮は12月のタイ遠征。期間としては、五輪延期を加えると3年8カ月。
五輪監督期間は長いが監督不在と同じ
U-23チームの実質的指揮は腹心の横内コーチ。それでも戦術面での問題はなさそうだが、フル代表とU-23チームの活動が重なり、このままでは森保監督のU-23チームの直接指揮は東京五輪開幕直前まで待たなければならない。これは大問題。これでは監督不在と同じ。
兼任監督のメリットを活かし切れていない
森保監督の目標は「東京五輪金メダル」。その割にはチャレンジが足りないし、兼任監督のメリットを活かしていない。
フル代表就任当初、U-22五輪世代候補(冨安・堂安)を日本代表に抜擢。この点は兼任監督としての成果だが、その後は、久保と板倉抜擢以外に何の成果もあげていない。
さらに金メダル獲得に必須の「五輪世代とOA選手の融合」の実行度はどうか?
例えば、
- もっと多くの五輪世代をフル代表の試合で使う
- フル代表常連の欧州組五輪世代と国内組五輪世代の融合を進める
- 東京五輪に招集するのが極めて困難な海外組のOA候補を諦めて、国内組OA候補を2022年W杯アジア2次予選で使い、フル代表と五輪世代の融合を図る
こうしたチャレンジを兼任監督に期待していたが、リスクを恐れてこれまで全く実行されていない。
改善② 国際Aマッチデーに強化を行う
強化策は実を結んでいる
東京五輪世代は、
- 2019年6月トゥーロン国際大会 準優勝(優勝はブラジルU-22)
- 9月の国際Aマッチデーに北中米遠征(フル代表はアジア2次予選)
- 10月 ブラジル遠征(ブラジルU-22代表に勝利)
- 11月17日 キリンチャレンジカップ2019 コロンビア戦
これらの強化策は東京五輪世代に国際経験を積み上げる点を重視して実行してきた。リオ五輪強化策(国際経験はよりも所属チームでの成長)の失敗から学んだ改善点であり評価できる。
ただ五輪世代チームの完成度はゼロ
2019年10月までの強化策は十分結果を残したが、これだけでは金メダルには届かない。何故なら、これまでに積み重ねたのは国内組U-23日本代表候補者の強化策。
そのため、東京五輪代表チームのスタメン予想(国内組2名+海外組6名+OA3名)を考えると強化策の効果は限定的。
さらに、私が予想する五輪招集メンバー(国内組8名と海外組7名)の第一歩は、2019年11月17日のコロンビアU23戦。初の海外組と国内組の合体であったが、連携不足で0-2の惨敗。それ以来、コロナ禍などで何の進展もない。おそらく欧州サッカーシーズンが終わる6月まで待たなければならない。
改善③ オーバーエイジ(OA)の融合を早める
リオ五輪1次リーグ敗退原因は融合期間ゼロ
「誰をOAとして選出したか」、この点がリオ五輪の最大の敗因理由とされているが、私は「あまりにも遅すぎたOA選出で融合期間ゼロ」が最大の理由と思う。驚かないでほしい。リオ五輪でのOA選手が発表されたのは、
- 2016年6月14日 藤春選手・塩谷選手
- 2016年6月23日 興梠選手
それに加えてさらに驚いたのは、OA選手とU-23リオ五輪代表が合体した試合はリオ五輪開始直前、現地での7月27日と30日のたった2試合。
- 地元ブラジルの4部CSセルジッペ
- ネイマール率いるブラジル五輪代表
大会直前の試合を英語でWarm-up Matchという。これはすでに融合を済ませたチームが肉体と精神を慣らすためのもので融合を図るには程遠い。ということで「リオ五輪メダル獲得」と期待された選手が気の毒だ。
日本五輪代表にとって「チームの完成度を高める」ことがオリンピックメダル獲得への唯一の道。それなのに、リオ五輪同様、今回もOA選手と五輪世代の融合はなさそう?
東京五輪金メダルに向けてのチャレンジ
五輪世代とOA候補の融合は全く進んでいない。このままでは、東京五輪日本代表チームにOA枠の選手が加わるのはリオと同じく五輪開幕直前まで待つしかない。しかし、 次の思い切った戦略を実行できれば、金メダルへの扉を開けることができる。
① 国内組からDF重視のオーバーエイジ候補を早急に決定
何故、国内組からDF重視のOA候補を選ぶべきかはこちらの記事、「東京五輪サッカーOA枠活用、DF重視が金メダルへの道!」をご覧ください。
② 3月の26日と29日に予定されている東京五輪世代の強化試合を中止
③ そのかわり国内組OA候補と五輪世代候補を対象にミニキャンプを実施
④ 3月26日に外国籍Jリーガー or 国内Jリーガーとのトレーニングマッチ
⑤ 3月30日のモンゴル戦はミニキャンプ招集メンバーで臨む
⑥ 仮にモンゴル戦が延期なら、外国籍 or 国内組Jリーガーとトレーニングマッチ
⑦ 5月末に国内組OA候補と欧州組五輪世代を加えた東京五輪代表候補のミニキャンプ
⑧ 国際Aマッチデーに外国籍 or 国内組Jリーガーとトレーニングマッチ(2試合)
⑨ アジア2次予選残り3試合のうち1試合をを上記の東京五輪代表候補で戦う
これらを実施すれば、東京五輪日本代表候補(OA含む)は6月末までに5~6試合組める。融合はもちろん、チームの完成度を上げるには十分な時間だ。それに森保監督もかなりの時間を掛けられる。
そしてこれだけの強化試合を組めば、東京五輪日本代表チームの完成度は他のどの出場国よりも高くなる。そして金メダルの可能性も極めて高くなる。
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おわりに
リオ五輪失敗の歴史から学んで東京五輪に向けて準備しているように見えるが、どうだろうか?お金と時間を国内組U-23五輪世代の強化に充てたのは良いが、五輪代表チームとしての強化にはなってはいない。
コロナ禍のもと、五輪代表チームとしての完成度を上げられないまま、東京五輪を迎えてしまいかねない。金メダルへの扉を開けられるかどうかは、これから先の森保監督のチャレンジ次第。
監督が選手にチャレンジを求めるのは当然のことであるが、私は監督自身の大いなるチャレンジを期待する。ということでこれから先の監督の言動が非常に楽しみだ!
追記
昨日(2月24日)森保監督は「W杯アジア2次予選ミャンマー戦の延期による代替試合としてA代表 VS 五輪代表の試合」プランを明かした。コロナ禍で海外から対戦相手を呼ぶのは難しい為、実現しそうだ。
私の提案したチャレンジ④に近い構想、大賛成だ。願わくは「五輪代表」にはOA候補が含まれていると解釈したい。楽しみと期待が膨らんだ。
森保監督、大いなるチャレンジ、応援します!