なでしこ23年女子W杯アジア予選突破は簡単だが、その先のハードルは高くなった

はじめに

(2022年1月17日掲載:3月26日更新)

2023年7月20日~8月20日にオーストラリア・ニュージーランド共催で第9回FIFA女子ワールドカップが開催される。

過去のワールドカップと比べて最大の違いは、出場枠が32チームに拡大。なでしこジャパンのW杯アジア予選突破はより簡単になったが、本戦でのグループリーグ(GL)突破のハードルはむしろ高くなった

その理由やGL突破の為に取り組むべき対策などを紹介しますのでよろしくお願いします。

 

W杯アジア予選突破は簡単

W杯出場条件

アジアは5枠+H+P2。Hは開催国オーストラリア。P2は大陸間プレーオフの2チーム。

アジアカップでの上位5チームが自動的にW杯出場権獲得。上位5チームの次の2チームが大陸間プレーオフへ。

組み合わせ

1月20日~2月6日にインドで開催されるAFCアジアカップはW杯予選を兼ねた大会

この大会で開催地枠のオーストラリアを除いた上位5チームがW杯出場権を獲得できるのでアジア枠は1増と考えてよい。従って、なでしこジャパンは韓国と同じC組であるが、仮に韓国に負けても2位以内は確実でしょう。

結果:アジアからの出場国はオーストラリア(開催国)、中国、韓国、日本、フィリピン、ベトナムに決定。

 

2023FIFA女子W杯上位チームの出場国(予想)

FIFAランキングは最新のランキングですが、大会まではランキング発表の都度、記事の内容を更新します。

なお、なでしこジャパンとFIFA女子ランキング上位国についてはこちらをどうぞ!

www.ippo-san.com

  • B8はW杯過去5大会におけるベスト8以上の回数
  • 優勝は過去5大会での回数
  • ランキングは2022年3月25日発表
  • ランキング10位の北朝鮮はアジアカップ辞退でW杯出場資格なし

(2022年3月26日現在では開催国のオーストラリア・ニュージーランドと太字の国を除いて全て予想出場国)

 

FIFA

Rank

B8

優勝

USA

1

5

2

スウェーデン

2

3

 

ドイツ

34

5

2

オランダ

45

1

 

フランス

53

3

 

カナダ

6

2

 

ブラジル

79

3

 

イングランド

8

4

 

スペイン

97

 

 

オーストラリア

1112

3

 

ノルウェー

1211

3

 

日本

13

2

1

デンマーク

1415

 

 

イタリア

1514

1

 

スイス

1719

 

 

中国

1816

3

 

韓国

1917

0

 

ベルギー

20

 

 

オーストリア

21

 

 

 

GL突破のハードルは高くなった

その理由は簡単だ。なでしこジャパンの実力低下に加えて欧州勢が最大12チーム出場するから。

つまり、強豪国(FIFA女子ランキングTop10)の欧州勢(仏、独、蘭、スウェーデン、イングランド、西)に加えてなでしこジャパンと同等のレベルの中堅国6チームが出場する可能性が極めて高くなった。

私の予想では強豪国9チーム、中堅国11チーム、弱小国12チームが出場。なでしこジャパンの組に弱小国が2チーム入れば、グループ・リーグ突破は簡単だが、その組み合わせは50%しかない。

中堅国と強豪国が3チームの組に入る確率も50%。そうなるとグループ・リーグ突破のハードルは極めて高くなる。

例えば、中堅国でも下位の開催国ニュージーランドはFIFAランキング23位。しかし、韓国に0-2で勝利するなどメンバー全員が海外組で力を付けている。なでしこジャパンがニュージーランドと同組となっても簡単に勝てる相手ではない。

また、2021年11月欧州遠征でFIFAランキング16位のアイスランドに2-0で敗れたが、なでしこジャパンメンバーの連携不足を差し引いても欧州予選突破が微妙なチームに完敗するようでは、グループ・リーグ突破はかなり厳しくなる。

 

ハードルを越えるための提言

ワールドカップGL突破のハードルが高くなった点はお分かり頂けたと思う。では、GL突破やその上を目指すためにはどうすればいいのか、取り組むべき対策を提言したい。

プレー面でのWEリーグ改革

池田新監督のキーワード「奪う」には大いに賛同する。これまでのなでしこジャパンに欠けていた粘り強い守備など「奪う」ためのハードワークは必須。

強豪国との対戦で得点力不足は止むを得ないが、守備意識・判断力・危機管理能力などが不十分のため前半に失点するケースが目立った。その結果、これまでの5年間は強豪国にほとんど負けている。

これを打破するには、ベースとなるWEリーグの試合において、激しい競り合い、スピーディーでダイナミックなプレー、脅威を与えるパスワーク、スライディングなど、迫力あるゲームを目指すべきプレー面でのWEリーグ改革が必須。

改革を促進するため一定レベルの成功率を条件に月ごとに最多チャレンジ賞を設けたらどうでしょうか? 例えば、「シュート賞」、「デュエル賞」、「ロングパス賞」、「クリティカルパス賞」、「スライディング賞」、「セービング賞」など。

また、日本的なリスクと取らない(失敗を避ける)プレースタイルから欧州基準であるリスクと取る(相手の嫌がるところを狙う)プレースタイルへの移行も必要と思う。

セーフティ・ファーストのパス回しでは、いくら国際試合を重ねても攻撃力や守備力はアップしない。

日頃のWEリーグの試合で相手の嫌がるプレーを積極的にチャレンジ。そうなれば、必然的にプレーの精度・判断力・危機管理能力が磨かれるので、国際親善試合や大舞台で自ずと迫力ある攻撃と粘り強い守備が発揮できるようになる。その結果、強豪国に勝てるようになると信じている。

ベテラン・中堅選手を増やす

2018年W杯GLアルゼンチンに0-0。攻撃で圧倒しながらも無得点。当時のアルゼンチンのFIFAランキングは35位。また、2021年東京五輪でもチリ戦で1-0の勝利。チリのFIFAランキングは37位。このように大舞台での格下相手の得点力不足が目立つ。

なでしこジャパンは、ここ5年間、強豪国と比べて異常ほど平均年齢の低い若手中心のメンバーで臨んだが、期待するような結果は得られなかった。

それなのに池田新監督もJFA方針?に従って、更に若手主体で歩もうとしている。ベテランや前監督のもとで経験を積んだ中堅選手を捨ててまで一気に多くの新戦力を招集する必要があるのか?もちろん新戦力の招集を否定するものではないが・・・

むしろ、経験値の高いベテラン・中堅選手を少し増やしてバランスのとれたチーム編成にすべきである。メンタルが強く経験値の高い選手を起用すれば、落ち着きとメリハリが加わるのでプレッシャーをはねのけて格下相手に本来の実力を発揮すると思う。

試行する価値は十分あると思うしW杯までの時間もある。

世界基準を示せるワールドクラスの選手を増やす

若いなでしこジャパンには、W杯優勝経験がありワールドクラス且つ発信力のある選手が必要と思っているが、その遺伝子を持つワールドクラスのプレーヤーは熊谷選手だけになって久しい。

泥臭いプレーやスライディングを怠った若い選手を叱咤激励できるのはワールドクラスの選手だけ。ただ、1人だと、若手から疎まれるので叱咤激励するのは難しい。

「ワールドクラスの選手になるには何をすべきか、世界一を目指すには何をすべきか」を伝えられる選手が複数いれば、WEリーグという世界しか知らない若いメンバーにとって大きな刺激となるでしょう。

なお、海外のリーグとWEリーグの違いについては、こちらをどうぞ!

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おわりに

どの提言も実現性の低いものばかりでほとんど賛同は得られないと分かっているが、現状を変えてこそ未来が開ける

過去5年間で「W杯優勝国」という遺産を食いつぶしてしまった。そのため、なでしこジャパンとの親善試合に喜んで来日する強豪国や大きな国際大会運営組織(SheBelievesカップなど)からの招待は減るだろう。

それを補うためにも2021年11月の欧州遠征のような海外での中堅・強豪相手の国際親善試合を増やして欲しい。若いメンバーは海外での国際試合を通して世界基準を肌で知ることだろう。

こうして経験を通してワールドクラスのプレーヤーを目指す選手が出てきてほしい。世界を目指すなら現在のWEリーグでの実現は困難だろう。まずは、 遠藤純選手のように海外挑戦をしてほしい。

なお、現在海外でプレーしている日本人女子サッカー選手についてはこちらをどうぞ!

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