- 東京五輪はなでしこジャパンにとって極めて有利
- 2020年4月16日発表のFIFA女子ランキング
- なでしこジャパンのFIFA女子ワールドランキング推移
- FIFAランキングがWEリーグの未来を左右
- 補助金支給、大賛成だがWEリーグ成功にはもう一つ条件がある
(2020年3月14日掲載:2021年5月12日リライト)
はじめに
東京五輪サッカー前の最後の国際大会となった 2020 SheBelievesカップで3戦全敗。
なでしこジャパンは2020年12月18日発表のFIFA女子ランキングでは10位にランキングされたが、2021年4月発表のランキングで11位に後退。
だからどうなの? 東京五輪には関係ないでしょう? 確かに、FIFAランキングTop10転落はなでしこジャパンの東京五輪に直接関係しない。
しかし、FIFAランキングは、2021年9月開幕予定のWEリーグや2023 FIFA女子ワールドカップなど、日本女子サッカーの未来を大きく左右する。
それでは、最新FIFA女子ワールドランキングと高倉監督就任後のなでしこジャパンのランキング推移、そして、なでしこジャパンがFIFA女子ランキングTop5入りを目指すべき理由を詳しく紹介します。
東京五輪はなでしこジャパンにとって極めて有利
国際親善試合でカナダ戦大勝、E-1サッカー選手権優勝など、FIFA2019女子ワールドカップ「ベスト16敗退」のくやしさをバネに、W杯後順調に成長したかに見えたなでしこジャパンだった。
しかし、2020 Shebelieves カップで2019 W杯前から再三指摘していた課題が噴出。結果は、2019 Shebelieves カップよりひどい3戦全敗。
されど、コロナ禍で1年延期となった東京五輪は酷暑のなかでの戦い。平均年齢が最も若くしかも大舞台の経験者がほとんどのなでしこジャパンには極めて有利。
2020年4月16日発表のFIFA女子ランキング
北朝鮮が10位に復帰した為、なでしこジャパンは11位に後退。ただ、北朝鮮は2020年12月18日発表ではランク外。
その理由は18カ月以上国際試合がなかったから(規定通り)。それなのにもう2年以上も国際試合から遠ざかっている北朝鮮が突然ランキングに復帰。コロナ流行を配慮?
いずれにしてもなでしこジャパンのは実質的にはFIFA女子ワールドランキング10位であるので「Top10転落」とは言い難い。
チーム |
2019年 12月 ランク |
2020年 12月 ランク |
2021年 4月 ランク |
USA |
1 |
1 |
1 |
ドイツ |
2 |
2 |
2 |
オランダ |
3 |
4 |
3 |
フランス |
4 |
3 |
4 |
スウェーデン |
5 |
5 |
5 |
イングランド |
6 |
6 |
6 |
ブラジル |
9 |
8 |
7 |
カナダ |
8 |
8 |
8 |
オーストラリア |
7 |
7 |
9 |
北朝鮮 |
11 |
- |
10 |
日本 |
10 |
10 |
11 |
ノルウェー |
12 |
12 |
12 |
スペイン |
13 |
12 |
13 |
中国 |
15 |
15 |
14 |
なでしこジャパンのFIFA女子ワールドランキング推移
高倉監督就任前のランキング推移
- なでしこジャパンの過去最低順位は2003年の14位
- なでしこジャパンの最高位はW杯優勝後の2011年12月の3位。それを3年間維持
- リオ五輪予選敗退で2016年3月には7位まで後退
- その3月に佐々木前監督退任。翌、4月に高倉監督就任
高倉監督就任後のランキング推移
2016年4月に就任してから現在に至るまでのランキングは6位から11位の間で推移。
- 2016年6月 7位
- 2016年8月 8位
- 2016年12月 7位
- 2017年3月 6位 オーストライ阿がなでしこ以上にポイントを減らし順位逆転
- 2017年6月 6位 欧州遠征での1勝1分を反映
- 2017年9月 8位
- 2017年12月 9位
- 2018年3月 11位 アルガルベカップ6位
- 2018年6月 6位 2018 AFC女子アジアカップ優勝
- 2018年9月 7位
- 2018年12月 8位
- 2019年3月 7位
- 2019年7月 11位 W杯ベスト16で敗退
- 2019年9月 10位
- 2019年12月 10位
- 2020年3月 11位 SheBelievesカップ3戦全敗
- 2020年6月 11位
- 2020年8月 11位
- 2020年12月 10位 北朝鮮ランク外
- 2021年4月 11位 北朝鮮ランキング復帰
2021 SheBelievesカップ辞退で強豪国との対戦がなかった。そのためでランキングポイントを積み上げることはできなかった。2021年4月のパラグアイ戦、パナマ戦にともに7-0で圧勝したが積み上げたランキングポイントは1点にも満たない。
どういう事かと言えば、なでしこジャパンとパラグアイ・パナマの実力差から見れば当然の結果であったという評価。仮に6-0の勝利であったならノルウェーに抜かれて12位に後退していたでしょう。
FIFAランキングがWEリーグの未来を左右
なでしこジャパンが活躍しなければファンは減少する
欧州やアメリカでは女子サッカーファンがどんどん増えている。一方、日本では、2011ワールドカップ優勝で劇的に増えたファンは減る一方である。
- アメリカでは2013年の平均観客数数4,137人に対して2019年度7,337人。1.8倍。これは韓国K1より上、J2と同等の観客動員数
- イングランドでは2019/20シーズン途中平均で3,401人。2018/19シーズンの1.7倍。急増した理由は世界のトッププレーヤーがイングランド女子スーパーリーグに参加するようになったため
- W杯優勝後の2012年シーズンでは1試合平均3,000人を超える節も珍しくなかったが、2019年度の1試合当たりの入場者数は平均で1,300人前後。2012年から半減
Top10転落となればファン減少に歯止めを掛けるどころか拍車を掛けることになる。JFAはWEリーグ平均観客動員5000人を目指しているので神風が吹かない限り目標達成は難しい。
ところが2023FIFA女子ワールドカップ招致に失敗、その原因はファン減少?
ご存じの通り、JFAは2023年女子ワールドカップ招致を目標に掲げていたが、ライバルのオーストラリアとニュージーランドの共催となった。
東京五輪サッカー開催後なので日本以外での開催が望ましいと言う理由だ。ごもっともであるが、なでしこリーグの人気低迷が最大の理由と推察する。
観客増にはWEリーグのレベルアップが必須
「質の高いエキサイティングなパーフォーマンスを見せる」。それがアメリカ女子サッカーリーグ(NWSL)を発展させるための基本的な考え。
そのため国内選手だけでなく海外代表クラス46名(2021年度)の選手を11チームに分けているのでリーグのレベルは世界一。日本からは5名(永里、川澄、横山、籾木、宝田)がプレー。なお、海外でプレーする日本人女子サッカー選手についてはこちらをどうぞ!
レベルの高い試合を見たいサッカーファンと同様、レベルの高いリーグでより成長したい選手にとって「NWSLは最高の舞台」。ファンにも選手にも魅力溢れる女子リーグ。
なお、女子サッカーリーグ世界ランキングについてはこちらの記事をどうぞ!
一方、日本では、なでしこリーグに代わるプロリーグ、「WEリーグ」が2021年9月に開幕する。サッカーファンにとって嬉しいことではあるが、選手やリーグのレベルアップがないとファン増は期待できない。せめて世界でTop10くらいのクラブに成長してほしいものだ。
なお、女子サッカークラブ世界ランキングについてはこちらをどうぞ!
補助金支給、大賛成だがWEリーグ成功にはもう一つ条件がある
支援制度
この制度には大賛成。欧米などから有力選手を獲得したクラブに対し、上限320万円の補助金を支給する支援制度を導入する事が決まった。
NWSLも同様の制度(Allocation Money)を導入していてワールドクラスの選手獲得に各チームに最大で30万ドル支給。WEリーグも支援制度で人気上昇とリーグのレベルアップが期待できる。
もう一つのWEリーグ成功条件
海外から有力な選手が集まらなければ、プロ化しても単なる看板をすり替えただけのリーグになってしまいファンの増加もレベルアップも期待できない。
ワールドクラスの選手に魅力的なリーグと映らなければならない。それには金銭的な支援制度と同等以上に重要な点がある。なでしこジャパンのFIFAランキングである。
ワールドクラスの選手はFIFAランキング11位のリーグでプレーしたいとが思うだろうか? 魅力的なリーグになるには「なでしこジャパンFIFAランキングTop5入り」が必須と思う。そのためには東京五輪でメダルが必要。
なお、最新のなでしこジャパンFIFAランキングについてはこちらをどうぞ!
おわりに
JFAの目標は2023年W杯優勝。そこの照準を合わせて、2019女子ワールドカップには強豪国比で平均年齢の最も若いチーム編成で臨み大舞台を経験させたのだ。異例の若手中心の選考となったのだ。
さらに「WEリーグ」で女子サッカーのプロ化。2023W杯誘致には失敗したが、2023年W杯優勝のお膳立てを整えた。
ただ、それだけで女子サッカーの人気やリーグのレベルアップが計れるとは思えない。唯一の手段は、東京五輪で決勝戦進出(アメリカとの決勝戦)と考える。
東京五輪で決勝戦進出となればランキングポイントを70点以上稼げるのでFIFA女子ワールドランキングでTop5に入る可能性は高い。そうなれば海外のトッププレーヤーには「WEリーグ」は魅力的に映るだろう。
即ち、WEリーグの成功・日本女子サッカーの未来は東京五輪にかかっていると言っても過言ではない。東京五輪でメダルと獲れば選手にもWEリーグにも明るい未来を拓くことにつながる。
優勝の可能性もある。ガンバレ、なでしこジャパン!