はじめに
(2022年10月22日更新)なでしこジャパンは2022年1月30日、AFC女子アジアカップ準々決勝でタイを下し、なんとか2023年7月20日~8月20日にオーストラリア・ニュージーランド共催の第9回FIFA女子ワールドカップ出場を決めました。
しかし、2021年11月末欧州遠征でのアイスランド戦完敗やAFC女子アジアカップ準決勝敗退を考えると、2023ワールドカップGL(グループ・リーグ)突破に黄色信号が点滅していると感じるのは私だけでしょうか?
その根拠は2つ。池田新体制でのなでしこジャパンメンバー編成の躓き、そして女子ワールドカップ出場枠拡大(32チーム)でなでしこジャパンGL突破のハードルが高くなったこと。この2点を皆さんとシェアしたい。
なお、2022年10月22日抽選結果、などしこジャパンは強豪スペインと超格下のコスタリカ、ザンビアと同組。よって、本記事で懸念した欧州2チーム(強豪1+中堅1)がなでしこと同組になることは回避されたので、なでしこジャパンのGL突破は確実。
メンバー編成で大きな躓き
高倉新体制でのメンバー変更は10名
2016年高倉新体制の初陣では佐々木監督時代のメンバー20名から10名が入れ替わった(実質は宮間が辞退したので9名)。いわゆる大胆な世代交代を実行。それは東京五輪や2023W杯での優勝を目標に、戦力を落としてでも若手に大舞台での経験を積ませようとの狙いがあったからである。
そしてベテラン選手を若手に入れ替えながら2019FIFA女子W杯に平均年齢24.0歳(強豪国中最年少)で臨んだ。結果はベスト16だったが、準優勝したオランダに惜敗。
「若いなでしこジャパンなので上々の出来、これなら東京五輪(平均年齢25.4歳)で優勝できる」と思ったはずだ。しかし、東京五輪では決勝トーナメント1回戦で敗退。
敗因についてはこちらをどうぞ!
池田新体制では11名も変更
2021年秋に池田監督体制となり、大胆なメンバー再編成(平均年齢24.6歳)で初陣のオランダ遠征に臨んだ。東京五輪メンバー11名が落選。しかし、惨敗。
初の国際大会である2022アジアカップではヨーロッパ遠征の反省からか平均年齢は25.5歳。それでも東京五輪メンバー9名は再び落選。FIFAランキング17位前後の韓国・中国に勝てず準決勝で敗退。
実績のある中堅選手排除でチーム力が一層低下
池田監督によるチーム再編成の最大の問題は、せっかく代表経験を積ませた中堅の遠藤純・籾木結花・杉田妃和・三浦成美・山下杏也加やベテランの中島依美を初陣で招集しなかった点である。
これまで育て続けた彼女らよりもより優れた中堅・若手選手がWEリーグに沢山いるとは思えない。それなのに、チームを一歩ずつレベルアップすることを捨てて池田チルドレン主体のチーム再編成の道を選んでしまったためチーム力はさらに低下。
ヨーロッパ遠征では東京五輪経験選手を増やす
なでしこジャパンメンバー編成失敗に気付いて2022年6月のヨーロッパ遠征では東京五輪経験者を15名召集、初陣と比べて4名(山下杏也、加遠藤純、杉田妃和、三浦成美)増。ハッキリ言って8カ月間無駄にしたようなものだ。
しかし、海外組には中堅の籾木結花・田中陽子・三橋眞奈やベテランの永里優季・川澄 奈穂美などが頑張っている。まだまだ、チーム再編成の余地も時間もある。
なお、日本人女子サッカー海外移籍選手の活躍に関してはこちらをどうぞ!
なでしこジャパンGL突破に黄色信号点滅
2023年大会より出場枠が24から32に拡大。FIFAランキング中堅・下位チームが増えるのでなでしこジャパンのGL突破は楽になりそうだが、実は難しくなったと推察する。
その理由とは、実力の拮抗した欧州の中堅国(FIFAランキング11位~25位前後)が最大4チーム増えるから。そのため2023W杯では決勝トーナメント進出枠16のうち最大14枠を欧米勢に独占される可能性さえある。
これまでは強豪国だったなでしこジャパンはグループ・リーグ2位以上で楽にGL通過できた。Top10チームにはほとんど勝てなかったが、Top10より下位のチームにはほぼ確実に勝てた。
ところが2021年11月のオランダ遠征で中堅国のアイスランドに惨敗。そしてオランダ戦は2軍相手。それでも勝てなかった。
Top10外となった今、どの組にエントリーされようが中位以上のチームが3の組になる可能性は50%。となると、中堅国に勝たなければGL突破は難しい。黄色信号点滅状態である。
別の見方をすれば、Top10(9チーム)とオーストラリアのGL突破はほぼ100%。つまり、残り6枠を欧州勢(最大5チーム)・アジア勢(中国・韓国・日本)・アフリカ勢など22チームが争う事になり、GL突破には欧州中堅国からの勝利が必須。
6月欧州遠征の結果次第では赤信号点滅
W杯で欧州中堅チームに勝つには、欧州下位チームに圧勝しなければならない。さもなければなでしこジャパンの2023W杯GL突破は絶望的(赤信号点滅)になってしまう。
6月欧州遠征
- 25日 セルビア戦 0-5 勝 期待の千葉選手代表デビュー弾などで大勝
- 28日 フィンランド戦 1-5勝 植木選手の欧州遠征2戦連続ゴールなどで大勝
さすが下位チームには圧勝。
7月のE-1選手権で中位国の韓国・中国に確実に勝利できればW杯GL突破は青信号点滅に戻るが、結果はE-1選手権優勝、ただ、中国には引き分け。
10月国際親善試合
- 6日 ナイジェリア 2-0勝
- 9日 ニュージーランド 2-0勝
ニュージーランド戦はOK、ナイジェリア戦ではもう2点欲しかった。
11月スペイン遠征
11日 イングランド 4-0敗
15日 スペイン 1-0敗
2022年度初めての強豪国との対戦でイングランドに完敗。スペイン戦は互角以上のパーフォーマンスができたが、スペインはなでしこジャパンの苦手とする縦へのスピードをあまり使わず、ビルト度アップ戦術を磨く目的があったように思えた。
いずれにしても強豪国に勝てなければGL突破してもベスト16は難しい。
おわりに
なでしこジャパンの2023FIFAワールドカップでのGL突破に黄色信号が点滅しているというお話でした。その理由として、
- 新生なでしこジャパンのメンバー編成が大きく出遅れたこと
- 欧州が(3+PO1)増によりなでしこジャパンの対中堅国勝利が必須となった
池田監督の言う「ボールを奪う」というメッセージには大賛成。現時点では選手がその要求に答えられていないと受け止めている。
積極的なプレッシング、スライディング、鋭いカウンター攻撃などW杯優勝時のチームと比較したら歯がゆいばかりである。
2022女子アジアカップ準決勝敗退後の熊谷紗希選手のコメントにあるように「今日の中国に勝てないようじゃ、世界で勝つのは程遠い」。これはまさにチーム編成失敗の証しでしょう。
ただ、時間はまだ十分にある。W杯優勝時のなでしこジャパンの強みを取り入れ、実績とバランス重視のメンバー選考、そして昔のなでしこジャパンのようなハードワークができればGL突破は十分可能と考えますが、いかがでしょうか?
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