はじめに
(2023年5月22日掲載:2023年9月4日更新)
Jリーグはクラブ間格差が小さいまま30周年を迎えました。一方、欧州のリーグでは、リーグ内のクラブ間格差の拡大が続いている。
本記事では市場価値でみる世界のリーグ間格差やリーグ内でのクラブ間格差に関する調査結果を皆さんとシェアしたいと思います。日本人選手の移籍などの際の参考にして下さい。
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リーグ間市場価値格差
世界26リーグの市場価値をグラフにしました。プレミアリーグが突出していますね。そして、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスのリーグが続いています。
1位のプレミアリーグと4位のブンデスリーガの市場価値格差は、前回(5月22日)は2.41倍、今回は約10%増に当たる2.65倍。それを除けば、主要リーグ間の格差はほぼ前回と変わりません。
ただ、市場価値が大きく拡大するリーグがある。このグラフでは分かりませんが、サウジアラビアの市場価値は欧州スタープレーヤーの爆買いで前回(5月22日)と比べて3.3倍。また、メッシが加入したMLSの市場価値は前回比でわずか8%増ですが、サウジアラビア同様、いずれ、フランスに次ぐビッグリーグになりますね。
クラブ間市場価値格差
市場規模別にグラフを5つ作成。
クラブ間格差グラフ 1
スペースの都合で5大リーグのうち、比較的きれいな右肩下りのセリエAは外しました。概ね、スペインは2強、ドイツとフランスは1強。
プレミアリーグは穏やかな右肩下りですが、右端の2クラブのMVが極端に低い。これは昇格組のシェフィールドとルートンの市場価値で、前回最低MVの244よりも一気に85まで下がったから。
クラブ間格差グラフ 2
5大リーグに続く4つのリーグのグラフ。いずれも上位2~4クラブとそれ以外のクラブ簡には極端な市場価値格差が見られますね。なお、J1平均市場価値(14.1M€)よりも低いクラブ数は、ポルトガル 4、オランダ 4、サウジアラビア 3。
クラブ間格差グラフ 3
リーグ世界ランキング11位前後のリーグのリーグ内クラブ間格差グラフ。ブラジルとベルギーは比較的穏やかな右肩下りですが、スコットランドは2強、オーストリアは1強。
なお、J1平均市場価値(14.1M€)よりも低いクラブは、スコットランド 8、オーストリア 7。
クラブ間格差グラフ 4
クラブ最高市場価値が100M€以下のリーグ。MLSを除いて相変わらずリーグ内クラブ間市場価値格差は大きいですね。ウクライナは2強のリーグ。
クラブ間格差グラフ 5
やっとJ1が登場。J1もK1もほとんどフラットに近い。FIFAワールドカップ2022ベスト4のモロッコは、16クラブ中14クラブのMVがJ1の平均MV(14.1)よりも低い。
それでもベスト4になれたのは日本よりも多くの選手が5大リーグや世界Top100のクラブで活躍しているから。
クラブ間市場価値格差サマリー
プレミアリーグの市場価値は他のリーグを圧倒していると分かりましたが、具体的には、2番目に高いスペインの2.2倍、J1の41.4倍。
ここでは各リーグ内のクラブ間格差がどれくらいなのかを見ることにします。
最大格差
リーグ内MV最大クラブと最少クラブの市場価値格差。今回の格差が15倍以上のリーグはピンク、4.5倍以上は黄色で表示。
5大リーグでは軒並み前回より格差が拡大して、プレミア 3.2倍、ラ・リーガ 1.4倍、セリエA 1.1倍、ブンデスリーガ 1.5倍、リーグ・アン 1.2倍。
格差が大きい順に、サウジアラビア(46.4倍)、リーグ・アン、ポルトガル、ブンデスリーガ(30.9倍)。一方、少ない順ではK1(1.9倍)、J1(2.0倍)、MLS、ドイツ2部(3.6倍)。
なお、プレミアリーグの最大格差は13.6倍ですが、前回の最大格差は4.3倍。格差拡大の理由は前述(シェフィールド、ルートンの昇格)の通りです。
このように、クラブ間最大格差は市場価値が極端に高い or 低いクラブの存在で大きく変わるので、別の分析データを見てみましょう。
上位25%シェア
リーグによってスカッドが異なりますが、上位25%のクラブの市場価値がリーグ全体の市場価値の何%になるかをみることで、より実態を反映した格差を知ることが可能。
上位25%とスカッドの関係は、
- スカッド26~ 上位7クラブ対象
- スカッド22~ 上位6クラブ
- スカッド18~ 上位5クラブ
- スカッド14~ 上位4クラブ
- スカッド10~ 上位3クラブ
シェアが高い(MVが上位クラブに集中)順に、ポルトガル 82%、サウジアラビア 76%、スコットランド 75%、オランダ 72%、ギリシャ 71%。一方、少ないのはMLS 33%、K1 34%、J1 35%。
なお、次回更新から上位25%シェアでクラブ間市場価値格差の変化を追います。
優勝回数でみるクラブ間格差
各リーグにおける非情なクラブ間格差はクラブ優勝回数(過去10年)を見てもわかる。(カッコ内が優勝回数)
- プレミアリーグ マンC(6)、チェルシー(2)、リヴァプール・レスター(各1)
- スペイン バルセロナ(5)、Rマドリード(3)、Aマドリード(2)
- イタリア ユヴェントス(7)、インテル・ミラン・ナポリ(各1)
- ドイツ バイエルン(10)
- フランス PSG(8)、モナコ・リール(各1)
- ポルトガル ベンフィカ(6)、ポルト(3)、スポルティング(1)
- オランダ アヤックス(5)、PSV(3)、フェイエノールト(2)
- ベルギー クラブ・ブルッヘ(5)、アンデルレヒト(2)、ヘント・ヘンク・アントワープ(各1)
- ギリシャ オリンピアコス(7)、AEK(2)、PAOK(1)
- オーストリア ザルツブルク(10)
- MLS シアトルのみ2回でLAギャラクシーなど8チームが各1回
- J1 川崎(4)、横浜・広島(各2)、鹿島・G大阪(各1)
- K1 全北現代(7)、蔚山現代・浦項・ソウル(各1)
ご覧のようにK1を除けば市場価値と優勝には相関関係がある。MLSはドラフトやサラリーキャップでクラブ間格差を抑えている。また、Jリーグは自由競争を制限(C契約や指導者ライセンス制度など)してきたため極端にクラブ間格差が少ない。
J1とK1で優勝クラブがやや偏っているのは監督の力量の差と思われる。ただ、川崎も全北現代も陰りが見え始めている。特に、J1においては更なる発展のためには市場価値クラブ間格差拡大は避けられないでしょう。
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おわりに
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クラブ間格差があまりにも大きいと、クラブMV低チームの選手のモチベーションにどう影響するのでしょうか?
あくまで推察の域ですが、おそらくモチベーションを高めることになるのではないでしょうか?リーグ内の強豪チームに対して良いパーフォーマンスをすれば、上位リーグへの移籍や強豪チームへの個人昇格のなどの可能性が高まるからです。
そのためにはリーグ内に誰もが認める強豪チームの存在が必要。
欧州でリーグ・クラブの市場価値格差拡大は莫大な放映権料収入格差が理由ですが、Jリーグではリーグ配分金はこれまで“均等”であった。これが“結果重視”へ変わるのは素晴らしい事。
ACLでJリーグ勢がサウジアラビアのクラブに勝利することは、単にこれまでの3倍の優勝賞金を手にすることは別に、膨大な価値を生み出す、優勝クラブだけでなくJリーグ全体が「強豪」と誰にも認められるからです。
そうなれば、Jリーガーの市場価値は勿論のこと、海外へ移籍する際の移籍金は何倍にもなるでしょう。
配当金やアジアチャンピオンズリーグ優勝賞金など活用して選手の育成と補強を続ければ、10年後くらいには欧州のリーグと同様3強時代がやってくるかも知れません。
本記事は年数回更新しますのでまたアクセスしていただければ幸いです。
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