はじめに
会社の競争力や生産性を高めるためには管理職が経営資源の1つである人材を最大限に活用することが重要。それと同様にサッカークラブにおいても監督の人材(選手)活用力がチーム成績や選手のパーフォーマンスに大きな影響を与えると考えられる。
そこでJリーグ監督の人材活用力を過去五年間にわたり調べました。適切なデータが無いのでTransfermarktの推定市場価値を活用。つまり、手持ちの戦力を市場価値以上に活用できたかどうかをチェックして監督の人材活用力を考察。
Jリーグのクラブ推定市場価値ランキング(期待値)とリーグ戦順位(結果)は簡単に調べられるので、その期待値と結果の差(過去5年間)を監督の人材活用力とみなしてしてランキング。
過去5年間で最も実績を残した監督は鬼木達氏ですが、人材活用力で最も優れていた監督は誰でしょうか?
2022年クラブ別市場価値とリーグ戦順位
2022年12月10日現在のクラブ別市場価値ランキング、クラブ推定市場価値、リーグ戦順位は次の通り。
(カタールW杯出場選手を除いて2022年6月発表の市場価値から変更はありません)
J1
- 浦和 22.45M€ 9位
- 神戸 21.08 13位
- 横浜FM 19.38 1位
- 清水 19.35 17位(降格)
- 川崎 19.13 2位
- 鹿島 18.25 4位
- 名古屋 17.40 8位
- G大阪 16.28 15位
- 広島 15.98 3位
- セ大阪 15.95 5位
- 京都 15.03 16位
- FC東京 14.35 6位
- 福岡 13.98 14位
- 札幌 13.92 10位
- 磐田 12.13 18位(降格)
- 湘南 11.88 12位
- 柏 11.43 7位
- 鳥栖 9.93 11位
J2(昇格組)
2. 新潟 9.8 1位
3. 横浜FC 9.53 2位
例えば、鳥栖は期待値(クラブ市場価値ランキング)ではJ1リーグ18チーム中最低だったが、結果はリーグ戦11位フィニッシュ。その差は期待値よりも7ポイント高かった。さらに柏にいたっては10ポイントも高い結果を残しました。
一方、神戸の期待値は2番目に高かったが、13位フィニッシュ。つまり期待値よりも11ポイント低い結果。
こうした差が生じる理由の一つが監督の人材活用力とみます。
クラブ別戦力活用力 5年間の推移
MV:クラブ市場価値の所属リーグ内ランキング(期待値)
順位:所属リーグ戦順位(結果)
PTS:過去5年間の期待値と結果の差の合計
人材活用力Top5の札幌・川崎・FC東京・広島・鹿島のリーグ戦順位は過去5年間もクラブ市場価値ランキングを下回ったことはありません。
一方、浦和と神戸は期待値を大きく下回ったシーズンが何度もありました。鳥栖も2018年と2019年はそうでした。3チームに共通する点は大物選手の招聘。しかしリーグ戦成績には結びつきませんでした。
この点は選手の問題か監督の問題か分かりませんが、大物選手の招聘はリーグ戦成績アップに直結しないようですね。ただ、入場料収入・スポンサー収入・グッズ売り上げ等に多大な貢献をしていると察します。
Jリーグ監督の人材活用力ランキング
(シーズン終盤監督就任の場合、その年度のデータは除外)
5年間同じクラブを指揮したのはペトロヴィッチ氏と鬼木達氏のみ。両氏に加えて城福浩氏も過去5年間期待値を超える結果を出し続けました。お三方とも選手の実力やポテンシャルを上手く引き出したと言えるでしょう。
外国人監督では、ペトロヴィッチ氏以外、継続して期待値以上の結果を残している監督はいないですね。
過去5年間の人材活用上位6監督
ペトロヴィッチ
18年から札幌監督、広島(06-11)、浦和(12-17)。いまだ契約更新の知らせがない。鬼木監督の知らせもないので、もしかすると鬼木監督の後任? それとも日本代表監督?
長谷部茂利
20年より福岡監督。18-19年度は水戸監督。22年はわずかに期待値を下回りましたが誤差の範囲内。日本人監督の中で過去5年間に最も期待値以上の結果を出しているのは素晴らしい。
鬼木 達
17年から川崎監督、この間J1優勝4回。主力選手の海外移籍等による戦力ダウンや優勝という重圧のなかでも期待値を超える結果を出し続ける手腕はお見事。23年シーズンの去就は未定。次期日本代表監督なのか?それとも海外経験を積むためシント・トロイデンの監督を狙っているのか?
片野坂知宏
16-21年大分監督、16年J3優勝、18年J2準優勝。22年G大阪監督就任、8月解任。G大阪ではうまくいきませんでしたが大分時代は恵まれない戦力で期待値以上の結果を6年間出し続けました。凄いですね。
城福 浩
22年6月東京V監督。18年より広島監督、21年10月辞任。ペトロヴィッチ監督と同様、十分とは言えない戦力で常に期待値以上の成果を出しているのは立派。23年シーズンの去就は未定。監督未発表の神戸かな?
長谷川健太
21年11月FC東京監督辞任、22年名古屋監督に就任。13年G大阪でJ2優勝、14年J1優勝。G大阪時代ほどの結果は残せていないが、ほぼ期待値を超える成果を出している監督。
因みに、森保日本代表監督の広島監督時代(2012~2017)の人材活用力を調査したら、やはり期待値を超える結果を残し続けた。15年と16年のMVデータは無いが、
- 12年MV13位/結果優勝/PTS+12
- 13年8位/優勝/+7
- 14年10位/8位/+2
- 15年?/年間優勝/+12(推測)
- 16年?/年間6位/+1(推測)
- 17年5位/17位(7月辞任直前)/-12
よって、5年目までは32ポイントでペトロヴィッチ監督を超える活用力を発揮。17年はポイントを大きく失ったがそれでも6年間で22ポイント。日本人日本代表監督を選ぶ上で1つの参考になりますね。
23シーズン注目監督
マスカット
セルティック監督就任のため辞任したポステコグルー監督の後任として21年6月横浜FM監督就任。2022年J1優勝。J1トップクラスの戦力を上手く活用して連覇を成し遂げるか?
スキッペ
22年から広島監督。ギリシア代表監督(16-18)やドルトムントU19監督(19-20)を歴任。2年目となる23シーズンでも期待値を上回れば優勝と言う結果が見えてくるが、監督采配に注目。
スコルツァ
23年より浦和監督に就任。前年11位と惨敗したポーランドの強豪レフ・ポズナンは21-22シーズンにスコルツァ氏を招聘。クラブ創立100周年を迎えたこのシーズン、期待に応えてクラブを8回目の優勝に導いたが、一身上の理由で22年6月契約を解除。Jリーグ随一の戦力を持て余す浦和の再建なるか、大注目。
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おわりに
最後になりましたが、サッカーにおける人材活用力を私なりに定義しておきましょう。それは「選手のストロングポイント、ウィークポイント、経験やスキル、性格を把握し、個々の選手に最適な成長と出場機会を与えられる能力」と定義します。
ただ、実際はコーチングスタッフをはじめ多くの人がかかわっている。従って、人材活用力の対象者は選手だけとは限りません。
手持ちの戦力以上の結果を出す監督は沢山いますが、それを続けられる監督は少ない。
中位以下のクラブのペトロヴィッチ監督・長谷川監督・長谷部監督、J2の城福監督は手持ちの戦力を十分に活用しているので、優勝という結果を残さなくても名監督と言ってよい。
23年シーズン新監督就任発表があれば追記したいと思います。そしてシーズン中盤と終了後に本記事を更新しますのでよろしくお願いします。
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