2019年に続きアメリカからSheBelievesカップ2020に招待された。東京五輪に向けてなでしこジャパンの立ち位置を確認する上で絶好の機会だ。
今回はイングランド(FIFA女子世界ランキング6位、スペイン(13位)、アメリカ(1位)、そして日本(10位)が参加。参加チームのランキングは昨年より少し落ちている。
しかし、この大会で優勝すれば、東京五輪でのメダル獲得が現実味を帯びてくると思いませんか?
それでは、2019年大会と同様、なでしこジャパンのSheBelievesカップのメンバー(予想を含む)・見どころ(4つの視点)・日程・試合結果をお伝えしましょう。
- SheBelievesカップ2020と出場国
- なでしこジャパン(予想・確定)メンバー
- なでしこジャパンの成長を4つの視点で検証
- 試合の期待値・試合結果・評価など
- 総括:東京五輪に向けての展望
- 試合日程・テレビ放映(なでしこジャパン)
- 【五輪サッカー関連特集】
- 【海外でプレーする女子サッカー選手】
- まとめ
SheBelievesカップ2020と出場国
大会概要
- アメリカ合衆国サッカー連盟が主催する女子4カ国サッカー大会
- 2016年度より始まり今回5回目
- 2018年度までは世界ランクトップ4カ国が出場
- 前回は当時の世界ランク1位、4位、8位、10位の強豪国が出場
なお、前回大会の試合結果はこちらをどうぞ!
SheBelievesカップ2020大会 参加国の現在地
参加チームのワールドランキングから言えば、この大会は東京五輪におけるベスト8かベスト4の戦いに匹敵する。
- アメリカは北中米予選を終えたばかり。シーズンオフだが、例年よりコンディッションは良いはず
- イングランドはシーズン中だが、代表試合では2019FIFA女子ワールドカップ後は精彩を欠いている
- スペインもシーズン中だが、2019ワールドカップでは日本と同じくベスト16止まり。その後の成長もあまり感じられないが、ベスト16止まりはアメリカに敗れたためであり実力は世界でTop8クラス。
- なでしこジャパンは2019W杯後、チームとして徐々に成熟。カナダ戦圧勝やE-1選手権優勝など成長がみられる
なお、アメリカやイングランドなどの最新試合情報は下記の通り。
なでしこジャパン(予想・確定)メンバー
*は2月7日に発表された14~19日に福島県のJヴィレッジで行われる合宿メンバー(他には清家、猶本、林、上野)。
招集メンバーは太字で紹介(下記のメンバー以外に猶本光、上野真実が招集されている)
赤字:鉄板メンバー
GK
- 山下杏也加(日テレ・ベレーザ)*
- 池田咲紀子(浦和レッズレディース)*
- 平尾知佳(アルビレックス新潟レディース)*
DF
- 熊谷紗希(オリンピック・リヨン/フランス)
- 鮫島 彩(INAC神戸レオネッサ)
- 三宅史織(INAC神戸レオネッサ)*
- 清水梨紗(日テレ・ベレーザ)*
- 宮川麻都(日テレ・ベレーザ)*
- 南 萌華(浦和レッズレディース)*
- 土光真代(日テレ・ベレーザ)*
- 松原有沙(ノジマステラ神奈川相模原)*
MF
- 中島依美(INAC神戸レオネッサ)*
- 籾木結花(日テレ・ベレーザ)*
- 長谷川唯(日テレ・ベレーザ)*
- 杉田妃和(INAC神戸レオネッサ)*
- 三浦成美(日テレ・ベレーザ)*
- 遠藤 純(日テレ・ベレーザ)*
- 植木理子(日テレ・ベレーザ)*小林に代わり招集
FW
- 小林里歌子(日テレ・ベレーザ)*ケガで辞退
- 菅澤優衣香(浦和レッズレディース)*
- 岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)*
- 池尻茉由(水原都市公社女子SCマイナビ仙台)*
- 田中美南(INAC神戸レオネッサ)*
なでしこジャパンの成長を4つの視点で検証
この大会はなでしこジャパンの東京オリンピック成績を占う上で極めて重要な意味を持つ。2018女子W杯を経験して大きく成長したように見えるが課題は解消されているのか、そこが最大の注目点であろう。
前回のSheBelievesカップ大会と同様、4つの視点でなでしこジャパンの成長を確認しましょう。
4つの視点とは、
① 若さを活かすことができるか
- 2019年ワールドカップでは経験値・平均年齢とも強豪国の中で極端に低かった(下記の記事)。W杯で経験値は積み上げたが、平均年齢はベテランが減りさらに低い。W杯では日本代表としての自覚に欠けた選手がいたが、責任感とメンタル面で成長していると思われる。シーズン前だが、若さという武器を泥臭くひたむきなプレーに転換できるか?
② 強豪国との試合で「先制されると勝てない」ジンクスを破れるか
- 2018年度以降の強豪国(Top10)との試合において先制点を与えると勝てていない。もっとも、親善試合を含めて強豪国と16試合戦ったが、勝てたのは先制した4試合。
- 東京五輪でメダルを獲得するには強豪国に3~4試合勝たなければならない。先制されても逆転できる力を備えていれば間違いなく東京五輪でメダルと獲れる
③ 守備力はアップしたか(前半失点しない、3試合で3失点以内)
- 強豪国との敗戦では前半の失点が目立った。前半無失点で抑えることができるか?メダルを獲れるかどうかは守備力次第(下記)
④ 攻撃力はアップしたか(3試合5得点以上)
- 決定力が課題であることに変わりはないが、「ボールを奪われないようにうまくパスを回しながらチャンスを伺うやり方」では「相手は怖いと感じないから余裕をもって守れる」
- W杯でハッキリしたが、ボール支配率は勝敗に関係しない(下記)。ボールを失うリスクを承知で決定的チャンスを作る攻撃ができるか?
試合の期待値・試合結果・評価など
試合ごとの期待値
対戦チーム |
期待値 |
スペイン戦 |
1-0勝 ここ2年下位チームに負けていない。W杯直前の親善試合では分けたが、なでしこ成長の証を示すには2-0が欲しい |
イングランド戦 |
2-1勝 東京五輪で同じE組になる可能性大。負ければ五輪のメダルは無理 |
アメリカ戦 |
1点差以内 過去の対戦では点の獲りあい。この試合では最少失点を抑えることができるか? |
試合結果
スペイン戦 3月5日(日本時間3月6日)
スコアと得点者
スコア |
1-3負 |
得点者 |
岩淵 |
先発
山下
清水、熊谷、南、遠藤
池尻、杉田、三浦、中島
岩渕、菅澤
寸評
結果は完敗である。しかし、スペインに圧倒された結果の3失点ではない。どちらかと言えば、五分五分の展開。前後半とも開始直後(8分、48分)の失点してはいけない時間帯での失点。
ただ、ミスが絡んだ失点なので危機意識と守備力が改善されれば問題はないと言いたい。
シーズン開幕前で仕方ない面もあるが、実力のあるチームと対戦する上での未解決の課題が目立った。
- 気迫や戦う姿勢があまり感じられない(メンタル)
- 危ない場面の察知能力が足りない(危機管理)
- パスコースを作る動きやスペースへの動きが少ないのでボールを奪われるシーンが目立った
もう一つの問題は戦術ミス。これまでなでしこジャパンが再三繰り返してきた「前半の早い時間帯での失点」は致命傷と指摘してきたが、この試合でDFに不慣れな選手を使った。選手育成が目的なのか、東京五輪シミュレーションが目的なのか?
一方、山下のファインセーブや途中交代で入った籾木・田中両選手のよいプレーが散見されたので次のイングランド戦に期待したい。
検証ポイント |
寸評 |
若さを活かす |
No 気迫・スピード・泥臭い粘りのあるプレーが物足りなかった |
先制されても逆転 |
No 前半終了間際の岩渕の同点弾までは良かったが、いつものような後半の流れるようなパスワークは見られなかった |
前半無失点 |
No 遠藤を責めるのは酷。戦術ミスだろう |
リスクを承知で決定的チャンスを作る |
Yes 清水から岩渕へのパス、籾木から田中へのパスは好例。全体的にその意識は高かったように感じられた |
シュート本数 |
日本 12/15 スペイン |
枠内シュート本数 |
日本 4/6 スペイン |
なお、ボール支配率は日本43%
イングランド戦 3月8日(日本時間3月9日)
スコアと得点者
スコア |
0-1負 |
得点者 |
|
スタメン
池田
土光、三宅、南、熊谷
籾木、杉田、三浦、中島
菅澤、田中
寸評
惜敗と思われるかもしれないが、後半だけを見れば完敗。前半のイングランドは積極的な攻撃を抑えていたのでプレッシャーも少ない中、なでしこは積極的にシュートを狙ったのは良かったが得点に結びつかない。
後半プレッシャーを掛けゴールを狙うイングランドの圧に押されっぱなしのなでしこはほとんど攻撃のチャンスを作れない。
そんな中、DFのミスをつかれスペイン戦と同じ様な失点。同じような失敗を続けるようではなでしこジャパンが強豪国に勝つのはかなり難しい。仮に3戦全敗となれば現在のFIFAランキングTop10から脱落することになるだろう。
検証ポイント |
寸評 |
若さを活かす |
No イングランドより平均年齢がはるかに若い割には動きにスピードがなかった。必死なプレーシーンも少なかった。 |
先制されても逆転 |
No 後半は失点がなくても得点できるような雰囲気は全く感じられなかった。強豪国との対戦でプレッシャーが強くなるとなでしこらしさが出せない課題は解消されていないというか、それがなでしこの現在地なんだろう。 |
前半無失点 |
Yes イングランドがあまりせめてこなかったのが主な理由 |
リスクを承知で決定的チャンスを作る |
Yes 特に前半は積極的にゴールを狙う姿勢が見られた。それもパスを繋いで繋いでチャンスを狙うのではなく数少ないパスでゴールを狙う姿勢は評価できる。また、田中選手のPA内で2~3人に囲まれた中でシュートまで持ち込んだのは素晴らしかった |
シュート本数 |
日本 10/10 イングランド |
枠内シュート本数 |
日本 3/6 イングランド |
なお、ボール支配率は日本54%
アメリカ戦 3月11日(日本時間3月12日)
スコアと得点者
スコア |
1-3 |
得点者 |
岩淵 |
スタメン
山下
清水、土光、三宅、宮川
籾木、杉田、三浦、中島
岩渕、田中
寸評
前半はバイタルエリアでの安全なパスコースばかりで仕掛けるプレーは田中選手くらい。ゴールを狙う意識も足りなかったが、積極的にパスを受ける動きがいつも通り少なかった。そんな中、アメリカの凄まじい攻勢に耐え切れずにミスがらみで2失点。
後半はアメリカが明らかにペースダウン。前線からのプレスが極端に減り日本が攻勢に転じることができた。そんな中、13分になでしこらしい連係プレーで岩渕が得点。この失点がアメリカの攻撃にスイッチを入れることになり再度攻撃に転じたアメリカが3点目を決めた。
検証ポイント |
寸評 |
若さを活かす |
No 淡々と試合を進めた感じで若さを発揮したプレー(スピードの変化・プレーの強弱)などはほとんど見られなかった。 |
先制されても逆転 |
No 3試合とも逆転できる実力は無いと感じた。W杯よりも後半の攻撃が期待値以下だった |
前半無失点 |
No 意識しすぎているのか意識していないのか分からないが、「何が何でも失点しない」心構えがプレーを見ていてほとんど感じられなかった |
リスクを承知で決定的チャンスを作る |
No 感じられなかった。あくまで「パスを回しながらチャンスがあればシュート」というスタンス。崩せないならミドルシュートでもいいが、それも2歩程度だった。 |
シュート本数 |
日本 11/7 アメリカ |
枠内シュート本数 |
日本 4/4 アメリカ |
なお、ボール支配率は日本56%。
順位表
チーム名 |
勝-分-負 |
得点 |
失点 |
勝点 |
アメリカ |
3-0-0 |
6 |
1 |
9 |
England |
1-0-2 |
1 |
4 |
3 |
日本 |
0-0-3 |
2 |
7 |
0 |
スペイン |
2-0-1 |
4 |
2 |
6 |
総括:東京五輪に向けての展望
2019年度のSheBelievesカップの結果と比較していいところは一つもなかった。2019年度の「なでしこジャパンのSheBelievesカップ試合結果総括と2019W杯への期待」で課題をリストアップしているが、W杯という大舞台を経験したがその経験が全く生かされてないし、成長しているなと思っていたがそうでもない。
熊谷選手が試合後のインタビューで語ったが、「危機感が足りない」。なでしこを代表しているという責任感も感じられない。W杯でオランダに負けた悔しさは忘れてしまったのだろうか?
ただ、熊谷選手のインタビューで気になった点があった。「世界との差を感じた」というコメント。これを言っているようでは大舞台で強豪国に勝てるわけがない。
おそらく若手を意識しての発言と思うが、ずけずけと言うタイプの選手でない熊谷選手は、若い仲良しチームとのコミュニケーションに相当苦労しているのだろう。ずけずけと言えるベテラン、若手がピリピリするベテラン、強いリーダーシップを発揮できるバリバリのベテラン抜きでは期待できそうにない。
また、高倉監督の試合後の会見での発言も気になった。選手にあれこれ求めるのはいいが、選手がそれを身に付けるためにどんな指導をしているのか全く見えない。いつも解説者のような発言ばかりで課題に対する具体的な取り組みは聞かれない。「敵(問題)は本能寺(高倉)にあり」?。
とは言っても東京五輪まで残り3試合。軌道修正する時間はない。おそらく格下の相手との試合が組まれるだろう。せめて大勝して気持ちよく五輪に臨んで欲しい。
試合日程・テレビ放映(なでしこジャパン)
日本時間
2020年3月6日 スペイン戦
- 試合開始時間6:23
- 試合会場 Exploria Stadium Orlando, Florida
- テレビ放送 NHK BS1 午前 6:10
2020年3月9日 イングランド戦
- 試合開始時間3:23
- 試合会場 Red Bull Arena Harrison, New Jersey
- テレビ放送 NHK BS1 午前 9:00(録画)
2020年3月12日 アメリカ戦
- 試合開始時間9:08
- 試合会場 Toyota Stadium Frisco, Texas
- テレビ放送 NHK BS1 午前 9:00
【五輪サッカー関連特集】
W杯・五輪データで分かる東京五輪勝利への道
東京五輪開催前は出場国・メンバー・結果予想を楽しもう
東京五輪開催前:日本と出場国の最新情報特集
【海外でプレーする女子サッカー選手】
まとめ
SheBelievesカップ2020は、東京オリンピックに例えれば、ベスト8やベスト4に残ったチームと戦うような大会である。
従って、なでしこジャパンの東京オリンピックにおける成績を占う上で多くのことを語ってくれるに違いない。
この記事ではメンバー予想と試合結果などお伝えするとともに、なでしこジャパンが2019年から抱えている課題を4つの視点で検証していきたい。
頑張れ、なでしこジャパン!