東京五輪女子サッカー:優勝国予想、なでしこジャパンの可能性は?

(2021年4月27日掲載:2021年7月28日更新)

はじめに 

東京五輪サッカー競技開幕まで残り10日。なでしこジャパンの五輪成績予想は、過去の五輪データやランキングとの関連を根拠に「決勝トーナメント進出の可能性は91%」及び「メダル獲得の可能性は17%」と紹介しましたが、優勝はどうなのだろう?  

普通に考えれば、優勝の本命はアメリカ。対抗馬としてはオランダスウェーデン。いわゆる、2019FIFA女子ワールドカップフランス大会上位3チーム。この点は否定しませんが、なでしこジャパンンも密かに優勝を狙っている

そこで4月21日の組み合わせ抽選結果(なでしこジャパンはイギリス・カナダと同組)などを踏まえ五輪にまつわるジンクスやアメリカ女子代表の死角などを考察。はたしてなでしこジャパンの優勝可能性はどの程度なのでしょうか? 

追記:グループ・ステージを終えて日本は1-1-1で辛うじて決勝トーナメント進出。準々決勝戦は唯一3戦全勝のスウェーデン。なでしこジャパンのメダル獲得はほぼ絶望的のようだが、リオ五輪では金メダルのドイツ、そして銀メダルのスウェーデンは共にGS成績は1-1-1。激しい守備と泥臭いプレーをすればメダルの可能性はある。

アメリカとなでしこジャパンの優勝はない?

「アメリカとなでしこジャパンの優勝はない」は過去の五輪データから導かれるジンクスである。しかし、ジンクスは破られるためにある。 私にも信じていたジンクスを破られた経験がある。

2019W杯フランス大会での優勝はフランスかアメリカのどちらかと予想したが、「地の利を活かしたフランスが優勝するだろう」と書いた。

さらにもう一つの理由があった。これもジンクスだが「FIFAランキング1位のチームの女子W杯は優勝ない」。それを当てはめてW杯直前のランキング1位のアメリカの優勝はないだろうと判断したのだ。

結果的には、アメリカとフランスが準々決勝で対戦。2-1でアメリカが勝利しジンクスはいとも簡単に破られた。

それでは五輪にまつわるもう2つのジンクスを見てみましょう。

① 五輪優勝チームは必ずW杯ベスト4チームから

過去6回の五輪大会では「五輪優勝チームは必ずW杯ベスト4チームから出る」。まさにジンクスである。

2019年FIFA女子ワールドカップのベスト4は、アメリカ、オランダ、スウェーデン、イングランド(イギリス)。東京五輪もジンクス通りなら優勝はアメリカ、オランダ、スウェーデンのいずれかのチーム。なでしこジャパン(W杯ベスト16)の可能性はゼロ。

② W杯優勝チームは五輪で優勝できない 

もう一つジンクスは「W杯優勝チームは翌年の五輪で優勝できない」。W杯と五輪の優勝チームを対比してみると過去6回ともジンクス通りである。

東京五輪もジンクス通りなら優勝はオランダ、スウェーデンのどちらかで、アメリカの優勝はない。 

(東京五輪ではジンクス通りアメリカは優勝できませんでした)

2015年W杯と2016年リオ五輪

  • W杯:アメリカ
  • 五輪:ドイツ(W杯4位)

2011年W杯と2012年ロンドン五輪

  • W杯:日本
  • 五輪:アメリカ(W杯2位) 

2007年W杯と2008年北京五輪

  • W杯:ドイツ
  • 五輪:アメリカ(W杯3位)

2003年W杯と2004年アテネ五輪

  • W杯:ドイツ
  • 五輪:アメリカ(W杯3位)

1999年W杯と2000年シドニー五輪

  • W杯:アメリカ
  • 五輪:ノルウェー(W杯4位)

1995年W杯と1996年アトランタ五輪

  • W杯:ノルウェー
  • 五輪:アメリカ(W杯3位)  

しかし、コロナ禍で1年延期になったとは言え、「W杯優勝チームは翌年の五輪で優勝できない」というジンクスは破られる可能性大。

その理由はたった一つ。アメリカの強さが際立っているからである。2019年1月にフランスに3-1で負けて以来、今日まで44試合連続無敗を継続中

仮に、2つのジンクスが破られるとしたらなしこジャパンに優勝の可能性が出てくる。

 

優勝候補の大本命、アメリカに死角はあるのか? 

ジンクスに頼らないなしこジャパンに優勝の可能性を求めて、アメリカチームに死角がないか考察してみた。

2つの死角が考えられる。

  • スウェーデンを比較的苦手にしている

アメリカはリオ五輪準々決勝でスウェーデンにPK戦で敗れた苦い思い出がある。東京五輪では2019W杯と同じく1次ラウンドで同組。1次ラウンドでスウェーデンに負けても余裕で決勝トーナメントへ進める。そうなれば次に当たるのは決勝戦。アメリカがスウェーデンに2回連続負けるとは考えにくいのでこの死角は当てにならない。

  • 高温多湿とチームの高年齢がパーフォンマンスを落とす

アメリカの主力メンバーはすでに30代。高温多湿の中で中2日の対戦が続く。チーム平均年齢29.7歳(強豪国で最も高い)のアメリカにはかなりきついはず。

なでしこジャパンはアメリカと対照的に強豪国の中で一番若いチーム(24.6歳で2番目に若いオーストラリアの26.5歳よりもほぼ2歳若い)ので決勝戦で当たればなでしこジャパンの勝算あり

 

アメリカ以外の優勝候補は横一線

オランダ、スウェーデン、ブラジル( or なでしこジャパン)がその候補

アメリカ以外の優勝候補として考えられるのはオランダ、スウェーデン、ブラジル( or なでしこジャパン)。しかし、その可能性は極めて低い。

ただ、2020年以降はスウェーデンとなでしこジャパンだけがアメリカに善戦している。アメリカの直近14試合で失点を許した対戦相手はこの2チームのみ。

とは言え、アメリカに勝利したチームはここ2年6ヵ月いない。2020年以降では2021年4月11日、スウェーデンがやっと引き分けただけである。  

なでしこジャパンが決勝戦進出するにはGS2位がベスト

アメリカがGS初戦でスウェーデンに負けてしまったので決勝トーナメント予想は大きく狂ってしまったが、決勝トーナメント進出チームは100%予想通りでした。

(準々決勝組み合わせ予想) 

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E組2位狙いがベスト

E組は日本、カナダ、イギリス、チリ。イングランド(イギリス)が絶不調なのでE組から決勝ラウンドへ進むのはカナダと日本と予想。そしてE組2位狙いがベスト(但し、アメリカがG組2位となった為、E組1位がベストとなったがE組3位でもほぼ同じ)。

E組2位なら準々決勝ではブラジルか中国と対戦。両チームとも十分勝てる相手である。そして準決勝ではオランダかスウェーデンと対戦するだろう。

E組1位なら準々決勝でオールトラリアか中国と対戦。ここで勝利しても準決勝でアメリカと当る可能性が極めて高いので決勝戦進出は絶望的。

従って、1次ラウンドはカナダ戦とイギリス戦に引き分けて3試合目のチリ戦大勝で2位通過がベストの戦略となる。

鬼門は準決勝のオランダ( or スウェーデン)

高倉体制になってからのなでしこジャパンと強豪国の直接対決をみると、現在絶不調のイングランドとオーストラリアを除けば、負け越しているのはオランダとスウェーデンだけである。決勝戦進出にはオランダ or スウェーデンを撃破しなければならない。

  • イングランド戦 0勝3敗
  • オランダ戦 1勝3敗
  • オーストラリア戦 1勝3敗1分
  • スウェーデン戦 0勝1敗
  • ブラジル戦 1勝1敗1分
  • カナダ戦 1勝1敗

若さと地の利を活かして準決勝突破

なでしこジャパン最大の強みは若さ。これに加えて「地の利」(特に気候)を活かせばアメリカと決勝戦を戦う可能性はさらにアップする。

チーム平均年齢

  • イギリス26.7歳、オランダ26.8歳、スウェーデン28.5歳、アメリカ29.7歳、ブラジル29.3歳(推定)、カナダ27歳、オーストラリア26.5歳、日本24.6歳。

なお、なでしこジャパン東京五輪代表メンバーは「 東京五輪に臨むなでしこジャパンメンバー、熊谷・岩渕ら22名 」をご覧ください。 

 

決勝トーナメントの組み合わせと試合結果

(全て追記)

準々決勝スウェーデン戦

スウェーデン勝利と見るが、スウェーデンの平均年齢が高い。そして何よりもなでしこジャパンの中盤と前線の選手は岩渕選手(男子で言えば林大地選手)のように激しいプレスなど体を張った粘り強いプレー(澤穂希さんが再三指摘している「泥臭さ、がむしゃらさ」)ができれば40%の勝算ありと見る。

もちろん、後がないのでベストメンバーで臨まなければならない。グループ・ステージ初戦から感じていたが、機動力に欠け守備のできない選手や寄せるだけでほとんど横パスかバックパスだけの守備をする選手を先発起用するのは疑問。

ただ、悪いのは選手でなく的確な指示や選手交代ができない監督。いつものプレーでは強豪国には通じない。勝利することでWEリーグの未来が開けるWEリーグ成功のためFIFA女子ランキングTop5入りを目指せ!)ことを肝に銘じて戦って欲しい。

  • GK 山下
  • DF 清水 熊谷 南  宮川
  • MF 塩越 中島 杉田 長谷川
  • FW 岩淵 田中

準々決勝結果

  • スウェーデン 3-1 日本
  • オーストラリア 4-3 イギリス
  • カナダ 0-0(PK4-3) ブラジル
  • オランダ 2-2(PK2-4) アメリカ

準決勝 

 

オーストラリア 対 スウェーデン

  • H2H:スウェーデンの5-3-0
  • オッズ:6.0 対 1.57
  • スウェーデン60%勝利

結果:0-1でスウェーデン勝利

アメリカ 対 カナダ

  • H2H:アメリカの23-2-0
  • オッズ:1.7 対 6.0
  • アメリカ勝利70%

結果:0-1でカナダ勝利

3位決定戦

オーストラリア 3-4 アメリカ

決勝戦

カナダ 1-1(PK3-2)スウェーデン

 (決勝トーナメント勝敗予想)

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なでしこジャパンの優勝可能性はどのくらい? 

優勝可能性5%は妥当

アメリカ以外の優勝候補と同様、なでしこジャパンの東京五輪優勝可能性は極めて低い5%未満でしょう。「メダル獲得の可能性は17%」と推察しているので5%未満は妥当なパーセントと思う。

1次ラウンドE組2位なら優勝可能性は10%

高倉監督が目指す「新国立競技場での決勝戦」だけを考えれば、1次ラウンドE組2位になれば、優勝の確率は10%くらいにアップするでしょう(但し、アメリカがG組2位となった為、E組1位がベストとなったがE組3位でもほぼ同じ)。

準決勝で当たるだろうオランダにW杯決勝T1回戦で敗れはしたが、もう一歩まで迫っは確かだ。また、スウェーデンと当るかもしれないが、スウェーデンの平均年齢は28.5歳。なでしこジャパンの勝機はある。

  

おわりに 

なでしこジャパンの優勝可能性を考察したが、アメリカのパーフォーマンスが突出している(44戦無敗を継続中)。なでしこジャパンに限らず、東京五輪に出場する強豪国の優勝の可能性はせいぜい5%と推察。

ただ、決勝戦に進む可能性は、組み合わせにもよるが、これまでの強豪国との直接対決や決勝トーナメント表から推察して1次ラウンドE組2位通過で10%くらいと思う。

唯一の不安材料は「なでしこジャパンのメダルの可能性は17%」でも語ったが、ここ1年以上、強豪国との対戦がないこと。従って、これまで強豪国戦で再三指摘した4つの課題(決定力不足、前半失点、リーダー不在、若いのに若さが足りない)をなでしこジャパンが克服して成長できているのか定かでない。

7月14日オーストラリア女子代表との調整試合。「勝つ必要はないが失点しないこと」と書いたが結果は1-0勝利で無失点。不調のオーストラリア相手とは言え、無失点は評価できる。少し成長したようなので五輪メダルへの期待が高まった。

因みに、2021年7月16日時点での優勝オッズは次の通り

  • USA 1.57
  • オランダ 7.0
  • イギリス 9.0
  • スウェーデン 13.0
  • ブラジル、日本 15.0
  • オーストラリア、カナダ 26.0

私はもちろんUSAに賭けています。

いずれにせよ、メダル獲得はなでしこジャパンの将来を大きく左右する。メダルを逸すれば2021年9月に開幕する日本初の女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)の成功はおぼつかない。

FIFA女子ワールドランキングTop10のリーグでは、海外の有力選手にとって魅力のないリーグと映ってしまい、これまでのリーグ戦と変わらなくなってしまう。

東京五輪女子サッカー決勝戦進出は「プロリーグ・プロ選手の将来を左右するほどの大事なこと」である点を自覚してに精一杯頑張ってほしい

目指せ決勝戦の舞台 新国立競技場!