なでしこジャパン東京五輪敗因の真相を推察、なぜ弱体化したの?

なでしこジャパンは東京五輪女子サッカー準々決勝でスウェーデンに3-1の敗戦で夢の舞台を去った。マスコミ、ワールドカップの優勝メンバー、識者、そして多くのサッカーファンが敗因を語っている。どれも正解だと思う。

例えば、監督の資質(不可解な采配・戦術・選考・起用・選手交替への疑問)、コロナ禍で強豪国との強化試合不足、選手の資質(実力・貪欲さ・使命感・責任感・闘争心・経験値・メンタリティ)や人材不足などいろいろ語られている。

それでは、選手やOBの声とW杯優勝チームとの違いを紹介しながら「なでしこジャパンの敗因」を深掘りして私の考えを皆さんとシェアしたい。

何が足りなかったか?の質問に・・・

 

なでしこジャパンの敗退でもっとも納得した点は、今大会の誤算について記者から「何が足りなかったか?」と問われると、監督が「足りなかったことはいま……。自分の中で整理して答えるのは難しいです」と答えた点。

私はこの回答に「驚いた」あるいは「あきれた」と言うよりも「やっぱりそうだったんだ」と思った。SheBelievesカップ20192020)などでの強豪国との対戦で同じ過ちを繰り返していたので「おかしいな」と思っていたが、なるほど、「これといった戦術がない」ので答えようがなかったと理解し回答に納得。

さらに「世界中の女子サッカーの急速な進歩で日本はついて行けなかった」、「選手の創造性や技術が思うように伸びなかったので負けた」と敗因を選手のせいにしている。

 

敗因の真相は「これまでと違うやり方で世界一に挑戦」

 

南アと親善試合前の西日本スポーツの単独インタビュー(2019/10/30)に「戦術に縛られず、個人の創造性や技術を重んじている。今は欧州も米国もシステマチックで、速いFWを前線に3人置いて4-3-3の布陣にして1対1やクロスで勝負させることが多い。私は規律を求めすぎて、選手の個性をつぶすのがすごく嫌。何かをやっちゃだめとは言わない。選択するのは選手だから」と答えている。さらに「当時(2011年)は日本が新しいサッカーの流れをもたらした。世界の多くのチームがやっているものとは違うやり方でもう一度世界一になるのが、私たちの挑戦だと思う」と話している。

ポイントは「違うやり方」、これに固執し過ぎた。本人も「2011ワールドカップ優勝は奇跡」と言っているくらいだから、当時のハードワークなどのなでしこらしさを継続する意思はなかった

むしろ「当時のなでしこジャパンの戦術に縛られず、個人の創造性や技術を重んじる独自の采配」で世界一に挑戦した。このインタビュー記事を読んで、どうして不甲斐ないのか、どうして(チームとしての)成長が見られないのか、どうして不可解な選手選考と采配を続けるのか、全ての疑問が解けた。

 

戦術と強みの軽視でなでしこジャパンは弱体化

 

「2011W杯後の欧米チームの急速な成長でなでしこジャパンは後れをとった」という話をよく耳にするが、正しい面もあるだろう。しかし、私からしたら、なでしこジャパンは戦術と強み(ハードワーク・チームワーク)を軽視したのでチームとして弱体化しただけ(やればできるのに残念)。

東京五輪スウェーデン戦を見てもスライディング回数チームワーク(意志疎通・共通理解・カバリング・献身性)、ハードワーク(素早い戻り・連動した攻守・素早い切り替え・プレッシング・粘りなど)など物足りなかった(期待通りに動いた選手は岩渕選手と熊谷選手、そして田中選手も合格かな)。

他の選手ができなかったのではなく、個人の創造性や技術を重視する監督がチームワークやハードワークは求めなかったのだ。明確な戦術を持たない監督のもとでチーム力が低下するの当たり前だ。

これでは勝利の女神は微笑んでくれない。確かにスウェーデンに3-1で負けたが、それ程の差はなかった(失点は防げたはず)。チーム力の差大きかったが、個の面では決して世界に後れを取ったとは言えない。

明確な戦術に加えてW杯優勝時のなでしこの強みの半分でも発揮していれば、グループ・リーグも含めて全勝できたと思う。 

違うやり方を実践するため、若手の個のレベルでの成長に伴い、なでしこジャパンの遺伝子にもつ戦士を減らしていった。

違うやり方を実践する上でなでしこジャパンの強みは不必要だったので、いつまでたってもチームの課題(強豪国に対する前半の失点、失点すると逆転できないなど)解消に取り組むことはしなかった。

明確な戦術なしでしかも強みを軽視したら、いくら強化試合を組んだところでどんなに個の成長はあってもチーム強化に結びつかない。そのため体格やスピードに優れチーム戦術を加えた欧米チームから大きく後退してしまった。

強みを軽視した上、明確な戦術を持たないなでしこジャパンの東京五輪グループ・ステージでの苦戦と準々決勝敗退は必然だった。

2019年W杯で総括した課題と東京五輪に向けての対策はこちら(なでしこジャパン2019女子サッカーW杯総括と東京五輪に向けて)。東京五輪の総括もほぼ同じ内容になりますね。

 

2011FIFA女子W杯決勝戦をみて違いをチェック

 

現なでしこジャパンとの違い(チームワーク・ハードワーク)を実感するため2011FIFA女子ワールドカップの決勝戦(アメリカ)と準決勝戦(ドイツ)のビデオを見た。

決勝戦:https://www.youtube.com/watch?v=UK1-iLXDqms

準決勝戦:https://www.youtube.com/watch?v=Xnxf5cRCRtM

なお、ハイライトビデをはこちら(なでしこジャパンは粘り強さを発揮して2011年W杯優勝、ビデオを見て実感しよう! )

 

当時のなでしこジャパンの戦い方は最近の欧米チームによく似ている。ただ、なでしこの強み言われているパスワークは決勝戦ではほとんどなかった

確かに体格やスピードで負ける局面もあったが、それを補って余りあるほどの「強み」を持っていた。だからデュエルの局面でもスピードでもほぼ互角の戦いをしていた。

もっとも顕著な違いは前線へのロングパスの多いこと。それもボールを奪ってから早いタイミングで。当時の欧米チームと同じことをやっていた。決して細かいパスワークで相手ゴールに迫ったのではない。

パスワークはアメリカ戦よりもドイツ戦で多かったが、パスをつないでのビルドアップはほとんどなかった。ほとんどは攻撃の起点を作る為か、相手のプレッシャーをはねのける為の自陣でのパスワーク。

フリーになればどんどん最前線の味方にロングフィード。DFにクリアーされても2ndボールを拾う為、2列目の選手が駆け上がる。それを拾ったら最小限のパスでFWにパス。そしてすぐにシュートに持ち込む。

仮にクリアーされたボールを拾えなくても、ボールを持った選手にプレスを掛けボールを奪いにいく。クロスやシュートしようとする選手には必ずと言っていいくらい(寄せきれない時)スライディングしている。

とにかくよく走りまわりロングフィードを多用し手数を掛けずにゴールを狙う(これが当時の戦術かも)シーンが目についた。こうした一進一退の死闘が展開された。

東京五輪の戦いと比べたら、なでしこジャパンはもちろんスウェーデンも2011年当時のなでしこジャパン戦士の運動量スピード(走るスピードだけじゃない。パス・判断・切り替え)、ハードワークには到底及ばない感じがした。

  

選手やOBは敗戦をどう受け止めたか?

 

2011FIFA女子ワールドカップの決勝戦(アメリカ)と準決勝戦(ドイツ)のビデオみればOBのコメント、素直に理解できますね。

 

岩渕選手

「日本のサッカーはうまいという部分はあるかもしれない。けど、もっと戦う部分やゴールに貪欲にいかなければいけない部分の差は、やっぱりあると思う。本当に日本のために頑張りたいと思うのと、今後そういう貪欲な選手がもっと出てきたらいいと思う」

「結局ボールを持っているだけではゴールが取れない。どこかで仕掛けなければいけない、どこかでチャンスを狙わなければいけない部分に関しては、本当に海外にいるからこそ思いますけど、外国人の選手って本当に貪欲なので。どこかでミスを恐れて…というのが日本人の悪いところかなと思うので、その部分は悔しいし、変えなければいけなかったですけど、変えられなかった部分かなと思います」

どうして変えられなかったのだろう?選手はみんなわかっていると思う。名前は出していないがおそらく選手の個性をつぶすのがすごく嫌いな監督の意向? 

 

熊谷主将

「これから世界で勝っていくために......、何をしていかなければいけないのか、もう一回考えるべきだし、うまいだけで勝てる相手ではない。自分たちのウィークな部分をどれだけ戦えるまでにしていくかが、日本女子サッカーの課題だと思います」

誰に向けて話したのだろう?表現は具体的でないが岩渕選手と同様の点を指摘。おそらく選手でなく監督や協会に向けての発言でしょう。

 

澤穂希

(イギリス戦後)

「どれだけの選手が体を張っていたか。失点してしまったシーンも、声が出ていたのかどうか。スライディングをしていたか。すごく疑問に思います」

「1点負けていた状況で、誰が声をかけて押し上げて前から守備にガンガンいくか。そういうシーンが全くみれなかった。この試合に賭けているのか、全く伝わらなかった。セカンドボールも球際も、強さがみれなかった」

(1次リーグ突破後)

「個人的には、もっと泥臭さ、がむしゃらさをみたい。足を出して、スライディングをして、かわされたらまた立ってスライディングして。みんなうまいのはわかっているので、がむしゃら感、ひたむき感をもっと見たいです」

「佐々木則夫監督(当時)は、試合前のウォーミングアップで全員にスライディングをさせ、ソックスを汚れさせた状態でプレーさせる工夫をしていた」

澤氏が初めて具体的に問題点を指摘した。これまで立場上こうした発言は控えていた。感情が抑えきれなかったからではなく、誰かがこうした発言を許可したのでしょう。それを知った他のOBもどんどん発言しましたね。その一部を紹介しましょう。

 

丸山桂里奈

「私なんて、W杯や五輪で澤(穂希)さんに“途中から入って動けないのはありえない”とか何回も怒られました。ノリさん(佐々木則夫監督)にも“途中で出た選手が勝負を決めろ”、”全員抜いてこい“と言われて、その気持ちがないならピッチに入るなという気持ちで入っていた。途中で出てるんだから思い切りプレーして、ゴールを奪うために燃えなきゃダメですよ」

 

永里亜紗乃

「チリ戦で勝利するためのポイントは、ボールを持っている選手をどんどん追い越すこと。それによって攻撃に厚みが生まれ、チーム全体の推進力につながります。ディフェンスラインも積極的に押し上げていく必要があるし、全員が運動量を惜しまずプレーしてほしい。カナダ戦と英国戦ではフリーでもボールを下げるプレーが目立っていましたが、ボール保持者を追い越していくことは意識一つで変えられるはずです。そうすることで勝利に必要な得点が生まれると信じています」

「精神論はあまり語りたくありません。でも必死さ、ガムシャラさ、勝利への執念がなければ技術や戦術がどれだけ優れていても勝てないし、見ている側の人の心も動きません。うまいだけ、キレイなだけ、カッコ良くやるだけでなく、いかに泥臭く戦って120%の力を出し切れるか。それが、なでしこジャパンの命運を握っています」

 

選考基準や新監督について

 

選手選考

永里選手や田中選手の2019W杯落選など選手選考は極めて不可解だった(FIFA女子W杯2019 永里優季のなでしこ代表復帰は消滅?)。しかもW杯では若手中心の異例の選考(なでしこジャパン2019W杯メンバーは強豪国比で異例の若手中心)。

ただ、こうしたのは東京五輪や次のW杯に向けて最強チームを作り上げる長期計画に基づくものとしてポジティブに捉えた(なでしこジャパン2019W杯メンバー選考を徹底解剖、JFA中期計画に沿ったベストの選択!)。

しかし、2019W杯はベスト16で敗退したので自国開催の東京五輪でのメダル獲得は若手主体では無理だろうと思い自分なりに必要なメンバー・改善点をリストアップ(東京五輪でメダル獲得に必要な なでしこジャパン メンバーを考察 )。

ところが、W杯の反省どころか、意地でもなでしこ優勝メンバーの手は借りたくないので鮫島選手や阪口選手などなでしこ戦士は召集外(東京五輪に臨むなでしこジャパンメンバー、熊谷・岩渕ら22名)。

性格に会わない優勝メンバーが排除され、その結果、なでしこ戦士の遺伝子がチームは勿論、個のレベルでも引き継がれることはなかった。

選手選考にあたり2つ要望がある。

① 選考基準にハードワーク・チームワークを加える

② なでしこ代表候補には2011FIFA女子ワールドカップ決勝戦のビデオを見せる。そして感じたこと・目標などを発表させる。このペーパーテストで戦士としての適性などをチェック

明確なチーム戦術はもちろんだが、強化試合を通して戦士としてハードワーク・チームワークのでき具合をチェック。不合格した選手にはその理由を明確に伝え、再チャレンジのドアを開けておく。

 

新監督

監督の交代が噂されているが、願わくはワールドカップ優勝メンバーから選んで欲しい。きっと当時のチームの遺伝子を引き継ぎ、よりアグレッシブでよりタフなチームになるでしょう(代表チームの厳しさについていけない選手がたくさん出るかも?)。

 

WEリーグとなでしこジャパンのレベルアップに期待

なでしこジャパンの選考基準が明確になればWEリーグのレベルアップが期待できる。なでしこジャパンメンバーは若い。一方、欧米組みは世代交代に苦労するはず。2023年のワールドカップでの優勝の可能性はかなり高くなるでしょう。

 

おわりに

 

明確なチーム戦術を敢えて持たずにハードワーク・チームワークというなでしこジャパンの最大の強みを軽視したことが、東京五輪準々決勝敗退の大きな理由と推察。

監督は「選手の創造性や技術が思うように伸びなかった」と語ったが、この計算違い(個人の成長で欧米チームに勝てる)は許されることではない。

もっと酷評するが、なでしこジャパンの勝利よりも自身の勝利(”違うやり方での世界一”から得られる名誉)を優先してしまった。それを知っていいながら?W杯で沸騰した解任論を見過ごしたJFAにも大きな責任がありますね。

いかがでしたか? 2023年W杯に向けては、なでしこジャパンの強みを熟知しているW杯優勝戦士に指揮をとって欲しいと願っています。また、監督に恵まれなかったなでしこジャパンのメンバーは不憫でならないが、WEリーグ発展の為、更なる成長の為、次のW杯を目指して所属クラブで頑張ってほしい。

 

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