はじめに
(2023年7月9日更新)東京五輪準決勝戦でカナダに20年振りに負けたアメリカ女子サッカー代表(USWNT)の世代交代が始まった。
東京五輪後、最初の4試合は従来のメンバーが主体だったが、2021年11月下旬の豪州遠征で招集メンバーを大幅変更、私達が良く知っているミーガン・ラピノーやアレックス・モーガン選手などのスターは招集外となった。
この遠征の初戦でアメリカ女子サッカー代表監督、ヴラトコ・アンドノフスキ氏(2019年10月就任)は代表経験の浅い選手5名を先発起用。オーストラリアとの2連戦で4名が代表デビュー、まさしく2023年W杯優勝に向けて世代交代が始まった。
それでは、豪州遠征メンバーと東京五輪メンバーの違い、主な注目選手、そして世代交代は成功したのか? こうした内容をお伝えします。
USWNT豪州遠征チーム
サマリー
- 平均年齢:東京五輪29.7歳⇒豪州遠征25.8歳
- 東京五輪代表:10名
- 代表デビュー:4名
- 平均キャップ数:東京五輪96キャップ⇒豪州遠征30キャップ
年齢構成
USA代表の平均年齢がいっきに4歳下がった。思い切った世代交代ですね。カッコ内は東京五輪の選手数。
- 31歳以上 1名(8名)
- 26歳以上 11(12)
- 21歳以上 11(2)
キャップ数
代表経験の少ない選手を多数召集。
- 100以上 2名(9人)
- 50以上 3(6)
- 25以上 3(4)
- 10以上 3(0)
- 10未満 12(3)
代表メンバー紹介(東京五輪 v 豪州遠征)
メンバーリスト
- Cap数は東京五輪前とオーストラリア遠征後
- 太字:東京五輪メンバー且つ豪州遠征メンバー
東京五輪メンバー22名のうち豪州遠征は10名。つまり五輪代表12名は世代交代のターゲット?
東京五輪メンバー |
豪州遠征メンバー |
||
選手名 |
Cap |
選手名 |
Cap |
Carli Lloyd |
306 |
Becky Sauerbrunn |
199 |
Becky Sauerbrunn |
188 |
Lindsey Horan |
108 |
Alex Morgan |
180 |
Abby Dahlkemper |
77 |
Megan Rapinoe |
179 |
Rose Lavelle |
68 |
Tobin Heath |
171 |
Emily Sonnett |
63 |
Christen Press |
149 |
Tierna Davidson |
45 |
Kelley O'Hara |
140 |
Lynn Williams |
45 |
Crystal Dunn |
116 |
Kristie Mewis |
33 |
Julie Ertz |
110 |
Andi Sullivan |
22 |
Lindsey Horan |
98 |
Catarina Macario |
12 |
Sam Mewis |
77 |
Sophia Smith |
10 |
Alyssa Naeher |
73 |
Sofia Huerta |
9 |
Abby Dahlkemper |
71 |
Margaret Purce |
9 |
Rose Lavelle |
56 |
Emily Fox |
8 |
Emily Sonnett |
56 |
Jane Campbell |
7 |
Lynn Williams |
37 |
Alana Cook |
4 |
Tierna Davidson |
34 |
Ashley Hatch |
4 |
Casey Krueger |
34 |
Casey Murphy |
2 |
Kristie Mewis |
26 |
Ashley Sanchez |
2 |
Catarina Macario |
7 |
Morgan Weaver |
2 |
Adrianna Franch |
6 |
Imani Dorsey |
1 |
Jane Campbell |
5 |
Bethany Balcer |
1 |
|
|
Bella Bixby |
0 |
注目選手
(成績は2021年度シーズン)
Ashley Hatch アシュリー・ハッチ FW
- 26歳
- 4 Cap
- ワシントン・スピリッツ所属
- 得点ランキング1位(10ゴール)
- Golden Boot賞
- ベストイレブン賞
Casey Murphy ケイシー・マーフィー GK
- 25歳
- 2 Cap
- ノース・カロライナ・カレッジ所属
- クリーンシート1位(11回)
Alana Cook アラナ・クック DF
- 24歳
- 4 Cap
- OLレイン
- 得点ランキング2位タイ(9ゴール)
- ベストイレブン賞
Midge Purce マーガレット・パース FW/MF
- 26歳
- 9 Cap
- ゴッサムFC
- ベストイレブン賞
2021年度ベストイレブン賞次点のDFのEmily Foxとソフィア・ウエルタは召集されたが、ベストイレブン賞に輝いた5名の米国選手は豪州遠征に招集されなかった。
なお、Emily Foxは2021年大学生対象ドラフトでレーシング・ルイビル(永里優季所属)が全体1位で獲得した23歳のルーキー。2021年度からスタートした新興クラブに入団して活躍できたことが、代表招集につながったのでしょう。
世代交代は成功したのか?
2023FIFAW杯メンバー、2019W杯、東京五輪ン、豪州遠征メンバー(世代交代初陣)を比較してみよう。
- 豪州遠征メンバー外となったのは東京五輪代表メンバーは12名の内、6名が2023W杯に招集された
- 東京五輪メンバー外で豪州遠征に招集されたメンバー12名の内、7名が2023W杯に招集された
- 欧州遠征後に初召集されたメンバーで2023W杯に招集された選手は5名。その内の一人はワシントン・スピリッツでプレーするトリニティー・ロッドマン21歳で元プロバスケットボール選手デニス・ロッドマンの娘
こうして見ると世代交代はうまくいっているように見える。しかし、チーム平均年齢は東京五輪と比べてわずか0.3歳下がっただけ。6名の東京五輪経験者が復帰したことでお分かりのように、ベテラン依存が続いている。
さらに、強豪国相手に3連敗(2022年10月~11月にイングランド2-1敗、スペイン2-0敗、ドイツ1-2敗)するなど、明らかに代表のパーフォーマンスは以前と比べたら落ちている。
つまり、世代交代はしたものの従来のレベルに戻っていないと言えよう。世代交代が成功したとは言い難い。
おわりに
東京五輪代表30代の多くが豪州遠征の登録名簿になかった。代わりに21歳~25歳までの選手が多数招集された。明らかに世代交代が始まった。
豪州遠征初戦では代表キャップ数10未満の選手5名が先発、30代の選手の先発はなし。それでも0-3で勝利。さすが世界No.1のリーグから選ばれた選手達だ。
アメリカ女子サッカープロリーグ(NWSL)では、海外からの代表クラスの選手40+名に加えてUSWNTメンバー数十名がワールドカップのような熱い戦いを繰り広げている。だから、サッカー能力値の限界はWEリーグとは比較にならないほど高くなる。
そんな環境で実績を残した選手が代表に選ばれるが、2021年度ベストイレブン賞に輝いた8名のうち5名は一度もフル代表に招集されたことがないほど選手層が厚い。
選手層の厚いアメリカ女子サッカー代表チームなら世代交代は順調に進むはず、と思っていたが、期待したほど若手が伸びていない為、ベテラン依存は続いている。
ベテラン依存は2023W杯が最後とは思うが、もはや「絶対女王」ではない。ワールドカップ3連覇はかなり厳しいが、若手の活躍で3連覇を達成すれば新時代の幕明けとなるでしょう。
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