- はじめに
- 2022シーズンの順位と保持率
- 2023序盤戦終了時点での状況
- 22-23 欧州のリーグの状況
- Jと欧州のリーグの違いな何か?
- 保持率と勝利の成立条件は?
- カタールW杯の影響?
- ボール非保持戦術は有効?
- おわりに
- 主なサッカー関連記事
はじめに
(2023年5月19日更新)
今季のJリーグ序盤戦では、誰も優勝候補に挙げなかった神戸と町田がJ1、J2で大躍進。両クラブの共通点はボール保持率が低いこと。一方、優勝候補一角の川崎やJ2で断トツ見られた清水が苦戦している。
一体何がどうなっているのだろうか?その原因を探るべく今季5月17日までの「ボール保持率と勝敗の関係」を昨季と比較。さらにイングランド・スペインやJと同程度の規模のリーグではどうなのかを調査。
調査結果で分かったのはボール保持率と勝利の関係が成立するには条件はあるようだ。
その結果を皆さんとシェアしたいのでよろしくお願いします。
2022シーズンの順位と保持率
J1では、上位6クラブ中、保持率の高い(ピンク色)横浜M、川崎、F東京が1、2、6位。一方、下位6クラブには保持率の低い(緑色)福岡、清水、磐田がそれぞれ14、17、18位。おおむね、保持率の高いクラブの成績が上でした。J2ではもJ1と同様。
見た目ではJリーグ2022シーズンにおいては、ボール保持率と勝敗の関係性は成立していた言える。
項目説明
- 順位:リーグ戦順位
- R:それぞれ左の項目の順位(例えば4番目は保持率のランキング)
- MV:市場価値
2022 J1・J2の順位と保持率
2023序盤戦終了時点での状況
J1では、昨季はなかったのに、上位6クラブ中、緑色に塗られたクラブが3つもありますね。これだけでも大きな変化。
特に神戸と名古屋の保持率は14位と17位だが、それぞれ首位と3位。共通点は、保持率は低いが得点が多く失点が少ない。一方、G大阪は保持率4位だが最下位。J2では、保持率18位の町田が首位。
昨季と比べて大きな変化が起きていますね。正に異変と言えるでしょう。
J1・J2の順位と保持率(2023年5月17日現在)
22-23 欧州のリーグの状況
次の表を見れば保持率の高いクラブは上位にいますね。保持率と勝利の関係が成立していると言えましょう。
しかし、スイスの表でお気づきと思いますが、スイスリーグでは保持率と勝利の関係は限定的ですね。
欧州国内リーグの順位と保持率(2023年5月17日現在、7クラブ中、3リーグのみ掲載)
Jと欧州のリーグの違いな何か?
ボール保持率と勝利の関係をさらに詳しく調べました。次の表をご覧ください。
スイス以外は18クラブ以上のリーグばかり。保持率下位とはリーグ内で保持率が最も低い6つのクラブを指します。
保持率が低いと得点は減るのでしょうか?失点は増えるのでしょうか? 欧州では例外なくその傾向です。しかし、今季のJリーグでは逆の現象(青色)が発生。Jリーグの特殊性もありますが、どうしてでしょうか?
そのヒントを求めて市場価値(MV)を調査。最大はリーグ内で最もMVの高いクラブと最も低いクラブの格差(倍率)。上下MVはMVでリーグトップ6の平均額とボトム6の平均額の格差(倍率)。そしてリーグ全体の市場価値を掲載。
J1の最大格差は2で上下MV格差は1.3、一方、プレミアリーグではそれぞれ4.3と1.9。スペインでは14.2と5.5。ドイツ2部ではそれぞれ2.7と1.4でJ1に近い。
Jリーグでは
J1では昨季と比べて保持率上位グループの得点が減り失点が増えています。しかも、保持率上位Gの方が保持率下位Gよりも多く失点(1.44倍)。今季はボール保持率と勝利の関係は全く成立していないと言えますね。
5大リーグでは
プレミアリーグ他全てのリーグで保持率上位のクラブは得点が1.5倍以上で失点はドイツを除いて7割未満。ほぼ完ぺきにボール保持率と勝利の関係が成立。
5大リーグ以外では
ドイツ2部とポーランドでは得点と失点が黄色(オレンジ)のマーク。これはボール保持率と勝利の関係が限定的(ボール保持の割には得点は増えないし失点は減らない)であるという意味。
ここまでである程度お気づきになったと思いますが、MV規模の大きいリーグ、and/or、上下MV格差の大きいリーグではボール保持率と勝利の関係が成立し、そうでないリーグではそれは限定的、そして規模や格差が一定以下になると成立しにくくなると言う点。
保持率と勝利の成立条件は?
① 一定以上の上下MV格差x一定以上のMV規模=1500
上下MV格差が2.0以下のリーグはプレミアリーグとドイツ2部ですが、プレミアリーグでは倍率は少ないが、金額格差は大きい。例えば6位と7位のクラブ間では200M€近い金額格差があるので例外。
一方、ドイツ2部での保持率と勝利の関係はかなり限定的なので保持率と勝利の関係が成立するには少なくとも上下MV格差2.0が必要でしょう。
リーグMV規模では、ポーランドとスイスがほぼJ1と同じ。しかし、上下MV格差はポーランド2.7、スイス1.9でJ1より大きい。MV規模が小さいのでポーランドもスイスも保持率と勝利の関係は限定的。よって、少なくともMV規模は400M€位くらい必要。
イタリア2部では上下MV格差が2、MV規模が524M€だが保持率と勝利の関係は限定的なので、ほぼ成立するには、一定以上の上下MV格差x一定以上のMV規模=1500。
なお、こちらが各リーグのクラブ間格差分布図です。どのリーグにおいてもJリーグとは比べ物にならないほどの大きなクラブ間格差がある。
- X軸の目盛は20M€単位
- 単純に作成するとMV規模の小さいリー100M€の左に集中してしまうので規模に応じて20倍、5倍してクラブ間のMV差がより見えるように調整
② 傑出した選手の存在
高保持戦術の代表格が川崎フロンターレ。しかし、今季の成績は散々でボールロストが多すぎる。その回収の為、汗だくになって動き回れば体力を消耗するのでケガをする選手が多くなる。
Jリーグで傑出していた選手(守田・三笘・田中・谷口)がいた頃は、ボール保持を高めて勝利に結びつけられたが、彼らのいない現状ではボール保持を高める戦術はうまくいっていないようだ。ただ、ブライトンの例があるので、鬼木監督の手腕に期待したい。
逆に、傑出した選手を複数抱えていないクラブが高保持戦術を採用するのは危険だ。高保持率戦術は、プレミアリーグの成績上位6クラブでさえ1試合平均およそ1.1失点以上という事実が示すように得点の確率は高いが、失点のリスクが予想以上に高いことを覚悟しなければならない。
カタールW杯の影響?
カタールW杯では保持率の低いチームが大健闘。勝利数は、ほんの少しだけだが、保持率の低いチームがまさった。日本代表に限られたことではなかったが、今季のJリーグのような結果だった。ドイツ、スペインのMV倍率は日本のおよそ4~6倍。
日本の保持率は4試合平均でおよそ30%、それでもベスト16。ワールドカップの特異な雰囲気やコンディッションの中で国の威信をかけて戦う点が格差に勝ったのでしょう。
これを見てJリーグで比較的市場価値が低く保持率の低いクラブの指導者や関係者は、「保持率が低くてもやれる」と思ったのかも知れません。少なくてもチャレンジする勇気をもらったことでしょう。
W杯での保持率と勝利の関係に関してはこちらをどうぞ!
ボール非保持戦術は有効?
上下MV格差もMV規模も小さいJリーグではボール非保持戦術(保持率46%以下としよう)は有効かも知れませんね。因みに、主な欧州国内リーグでは保持率50%未満でリーグTop6のクラブは極めて少ない。
例えば、ブンデスリーガのウニオン・ベルリン。5-3-2システム。堅い守備ブロックで相手の攻撃をしのぎロングボールを主体に手数をかけずにゴールに迫るスタイル。
ボール保持率リーグ16位(43%)でリーグ戦4位は立派だ。なお、クラブ市場価値はリーグ10位でバイエルン・ミュンヘンのおよそ8分の1。他には、イタリア2部のズュートティロールはボール保持率最下位ながら4位。
Jリーグでは、神戸、今季45.6%、昨季54.1%。なお、昨季の開幕10戦未勝利の時の保持率は61%。ポゼッションサッカーを捨ててから勝利が増えた。
高保持戦術であろうが、非保持戦術であろうが、成功するかしないかの多くは監督の力量次第のようですね。
おわりに
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現時点では保持率の低いクラブが比較的好調だが、これがいつまで続くか見守りたい。ただ、非保持戦術で勝利できるとなるとサッカー自体は面白くなくなり、やがてサッカー人気が落ちることになりかねない。
Jリーグ配分金比率が変更されるのでクラブ間格差は次第に拡大するだろうが、欧州のリーグと同様、保持率と勝利の関係が成立するには10年はかかるでしょう。
それまでは突出した選手やブライトンのデ・ゼルビ氏の様な監督の出現を待つしかなさそうだ。いずれにせよ、攻守が目まぐるしく変わるハラハラドキドキのダイナミックな試合展開を期待したい。
いかがでしたか?今後、保持率に注目しながらJリーグ見守っていきます。
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