はじめに
(2021年5月掲載:2023年9月26日更新)
男子サッカーの場合、リーグランキング情報を定期的に更新しているサイトがあります。リーグ世界ランキングは「サッカーリーグランキング:Jリーグは世界で何位?」で紹介しています。
しかし、女子の場合、例外的な大会を除いてそもそもクラブレベルでの大陸間国際試合がほとんどありません。従って、クラブランキングの計算ができませんのでリーグランキングも存在しません。
ただ、主要国の2023女子ワールドカップ代表選手のリーグ別選手数にW杯チーム成績を反映した選手レベル値と、年間勝点差をベースに求めたリーグ内クラブ間格差でもって女子サッカーリーグ世界ランキングを推定。
本記事ではランキング20位まで掲載。世界最高峰のリーグは? そして、2021年9月に開幕したWEリーグは世界何位?
なお、こちらの最新記事もご覧いただければ幸いです。
- なでしこジャパン:パリ五輪に向けて新戦力の招集に期待
リーグ別W杯代表選手数
前々回までは女子CLで準々決勝に進出した国別のクラブ数をベースにリーグレベルを推定。ただ、準々決勝進出チームは毎年ほとんど変わりません。
CLベスト8になるクラブは国内リーグで突出している。これではリーグレベル推測のベストな方法とは言えません。
そこで前回から別の方法を採用。即ち、主要リーグ別2023W杯選手数。そして今回は選手一人ひとりにW杯チーム成績に応じた基礎点を付与。それをリーグ別に集計。その結果、Top6リーグは同じでしたが、それ以外に少し変動がありました。
ランキング計算ロジック
簡単に説明します。
まず、基礎点ですが、優勝のスペインの選手23名には各1点。2位のイングランドの選手には0.95点。ベスト8の日本選手には0.75点、、、、を付与。
例えば、米NWSLでプレーする遠藤選手と杉田選手の基礎点は0.75。海外組なのでその基礎点はWEリーグには入りませんが、2名合計1.5点がNWSLに入ります。このように基礎点は選手が所属するクラブの加盟リーグに集計。
従って、選手レベル値は国内組基礎点のPts+外国籍組基礎点の選手Pts。当然、選手Ptsが一部のクラブに偏り過ぎない限り、選手Ptsが大きいほどリーグレベルは高い。
なお、今回のランキング対象リーグは原則FIFAランキング16位以内の国のトップリーグ。23W杯決勝トーナメント進出の16チームとグループリーグ3位のドイツ、ブラジル、中国、そしてカナダの4チーム。
なお、カナダは国内にトップリーグを持っていません。また、ナイジェリアとジャマイカは代表に国内組がゼロでしたのでリーグランキングから対象外となりました。ただ、選手の基礎点はクラブ加盟リーグに集計されています。
因みに、主要リーグにおけるW杯代表選手数(国内組+外国籍)は下記の通り。
Top25%占有率は、代表選手数の多いクラブ(12クラブならTop3)の合計をリーグ代表選手数で割った%。%の値が高いほど優秀な選手が上位チームに集中しているので、ある程度、上位クラブと下位クラブの実力格差の推定が可能。
米NWSLのクラブ間格差は異常なくらい少ない(サラリーキャップ制やドラフト制度で戦力均衡を図っている)。
リーグ内クラブ間格差
前述のTop25占有率でもクラブ間格差は推測できますが、ここ3季の平均勝点差を使用。勝点差はシーズン1位のクラブと最下位クラブの勝点差。これを試合数で割り、その値を最下位のリーグの勝点差で割った値を10倍したのが換算Pts。
換算Ptsが高いほどリーグ内1位のクラブと最下位のクラブの差が少ないと言えます。
女子サッカーリーグ世界ランキング
よって、女子サッカーリーグ世界ランキングは、選手レベルを示す選手Ptsとクラブ間格差を表す換算Ptsの合計Ptsでランキングを決定。
Top10リーグのコメント
- イングランドは2023W杯ベスト16以上に入った選手数で他のリーグを圧倒。但し、その49%は上位3クラブ(チェルシー、マンC、アーセナル)に集中。これに宮澤ひなたを獲得したマンUが続く。クラブ間格差が大きい
- 米NWSLはレベルが高く且つクラブ間格差が少ない。前々回までは米NWSLを世界最高峰のリーグとして紹介していましたが、3~4年前から始まったトップレベルの選手のイングランド女子スーパーリーグへの移籍でやや地盤沈下。パリ五輪で金メダルを獲れば世界1に返り咲くだろう
- 2023FIFA-ワールドカップ優勝のスペインは2強(バルセロナ、Rマドリード)。トップレベルの選手の50%はこの2強に所属。リーグ全体の選手層(リーグ戦力)ではNWSLを凌ぐが、クラブ間格差が大きのでリーグレベルでは世界3位
- フランスは前回と同じくドイツの上で4位。フランスは2強(PSGとリヨン)、ドイツは3強(ヴォルフスブルク、フランクフルト、バイエルン)。両リーグの大きな違いは選手基礎点(フランス0.75、ドイツはGL3位がたたり0.4)
- ドイツの外国籍選手は28であるが、その内の14名はW杯予選敗退のアイスランドとオーストリアの選手。優秀な外国籍選手はイタリアの方が多い
- イタリアが5位。イタリアのFIFAランキングは17位と低いが、外国籍選手の多さが目につく。これがリーグレベルを押し上げている要因。
- 表に外国籍選手数と外国籍Ptsがあるが、Ptsを選手数で割れば外国籍選手のレベルが分かる。因みに、イングランドは0.65。よって、多くは2023W杯ベスト16以上のチームの選手。イタリアも含めて6大リーグではドイツは0.43で一番番低い。ドイツにはW杯グループリーグ3位前後の選手が多いと言える
- W杯ベスト8の日本(WEリーグ)が3位のスウェーデンを抜いてリーグランキング世界7位。何故?と思うでしょうが、それは国内組の違い。日本は国内組からW杯14名、スウェーデンは9名。スウェーデンの主力のうち8名はイングランドでプレー。も一つはクラブ間格差、日本の方が少ない
- ノルウェー9位。外国籍選手7名の存在がリーグレベルを維持している。10位に中国がランクイン。これはW杯メンバー18名が国内組であることでリーグレベルがアップ
前回のランキング(2023FIFA女子W杯開幕前)
(カッコ内は2023年9月23日現在所属の日本人選手)
- 1位 イングランド女子スーパーリーグ(長谷川、長野、清水、宮澤、林、植木、浜野)
- 2位 米NWSL (永里、杉田、遠藤、三浦、松窪、小林)
- 3位 スペイン
- 4位 フランス
- 5位 ドイツ
- 6位 イタリア(熊谷、南)
- 7位 スウェーデン(宝田、籾木、門脇)
- 8位 WEリーグ
- 9位 ノルウェー
- 10位 オランダ(吉良)
- 11位 ブラジル
オランダとブラジルが今回のランキングで順位が下がってしまった、ブラジルはグループリーグ敗退で国内組選手Ptsが下がったのが大きな理由。
一方、オランダはスウェーデンと同様、主力15名はドイツ、フランス、イングランドなど国外でプレーしているので国内リーグがやや空洞化の状態。
オーストラリアとデンマークはもっと酷く、W杯メンバーの内、国内組はわずか2名
注意
どのリーグも 上位クラブと下位クラブのレベル差が大きい。クラブ間格差だけで判断すれば、上下の差が大きいイングランドよりもその差が異常に少ないNWSLの方がレベルが高いと言える。
おわりに
20名近くの日本人女子サッカー選手が欧米のクラブで奮闘中。彼女たちの最新情報に関しては、こちらの記事をご覧ください。
これからも海外へ移籍する選手が出てくると思います。移籍先のクラブだけでなくリーグのレベルを知ることで判断が変わるかもしれませんね。
一方、WEリーグには2023W杯決勝トーナメントに進出した外国籍選手は1人もいません。Top10リーグでは日本だけゼロですね。この状況は当面続くでしょう。
有望選手の流出のみで流入ゼロが続けばWEリーグの空洞化は避けられない。
主要国の代表選手にWEリーグでプレーしてもらうには、WEリーグが世界5大女子リーグに成長するしかありません。
そのためには、なでしこジャパンのFIFAランキングTop 5入り、及び、国際大会でのWEリーガーの活躍が不可欠。
ガンバレなでしこジャパン! ガンバレWEリーガー!
なでしこジャパンFIFAトップ5を目指せ!
WEリーグと海外女子リーグの違い
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