はじめに
このアメリカ遠征のSheBelievesカップ2019大会は、なでしこジャパンのFIFA女子ワールドカップ2019フランス大会での成績を予想する上で最も重要な意味を持つ。
2018年度のなでしこジャパンの試合結果から分かった6つの課題が解消されているかどうかという視点で試合内容を検証したい。
6つの検証ポイントは
- 大舞台(W杯・五輪)での経験値の低さをどう克服したか
- 強豪国との対戦で「先制されると負ける」ジンクスを打ち破れたか
- 守備力はアップ?(前半の半ば迄は失点しない、3試合で4失点以内)
- 攻撃力はアップ?(先制されても追いつけるか、3試合4得点以上)
- イングランドには負けないという自信がついたか
- 選手選考は正しかったか
- SheBelievesカップ大会概要
- 試合結果 アメリカ戦 2月27日
- 試合結果 ブラジル戦 3月2日
- 試合結果 イングランド戦 3月5日
- 順位表
- なでしこジャパン2019総合評価(3試合)
- なでしこジャパン試合結果事前予想(期待値)
- 試合日程(なでしこジャパン)
- 出場国のデータ
- なでしこジャパン召集メンバー (2月15日午後2:00発表)
SheBelievesカップ大会概要
- アメリカ合衆国サッカー連盟が主催する女子4カ国サッカー大会
- 2016年度より始まり今回4回目
- 過去3回は世界ランクトップ4カ国が出場
- 今回は世界ランク1位、4位、8位、10位の強豪国が出場
試合結果 アメリカ戦 2月27日
スコアと得点者
スコア |
2-2 |
得点者 |
中島、籾木 |
試合評価
検証ポイント |
寸評 |
経験値の低さをどう克服したか |
粘り強くプレー。後半も持つかなと思ったほど良く走った。終盤はむしろアメリカ以上に動けた。 |
先制されると負けるジンクスが破れたか |
前半24分に先制されたが後半22分に中島がフリーで同点ゴール。この1年間の強豪国との対戦で初めてジンクスを破った。見事! |
守備力アップ (2失点以内) |
2点を許したが、2点ともサイドからのクロス。サイド攻撃への対応が課題だが、良く守った。 |
攻撃力アップ (先制されても追いつく) |
後半32分にアメリカに勝ち越し点を許したが、アディッショナルタイムに籾木がフリーで同点ゴール。2回も追いついたのはかなり評価すべきこと。あと2試合、楽しみが大きく膨らんだ。 |
シュート本数 |
日本 5/13 アメリカ |
枠内シュート本数 |
日本 2/6 アメリカ |
マッチレポート
なでしこ 4-4-2、アメリカ 4-3-3 両チームともいつものフォーメーション
なでしこの先発メンバーは、
GK 山根
DFは山根から見て左から 有吉、鮫島、熊谷、清水
中盤の底に杉田、松原
2列目は長谷川、中島
ツートップが横山、小林
- アメリカはヒースがサイドを切り込み再三チャンスを作ったが、なでしこは何とか耐え抜く
- 前半10分、横山のシュートはゴールポストに当たり先制点奪えず
- しかし、このシュートでなでしこの攻撃力を恐れたアメリカの動きが変わり、なでしこが再三チャンスを作るがゴールに至らず。
- 前半24分、サイドから崩され、ラピノーがヒースのクロスに合わせて先制点
- その後はアメリカが終始押し気味で前半終了(1-0でアメリカリード)
- 後半もアメリカが押し気味に進めたが、後半22分長谷川からのパスを中島がゴール前にクロス。ところが相手DFのクリアーミスでフリーの中島がシュート、同点に追いつく
- 同点にされたアメリカは必死の形相で怒涛の攻め。後半32分、サイドからのクロスをモーガンが決めて勝ち越し
- なでしこもアメリカの攻撃をかわしながら必死に同点ゴールを狙い走り回る。アメリカに疲れが見え日本も反撃のチャンスがくる。
- アディッショナルタイム1分にゴールエリア内の長谷川からの横パスをフリーの籾木がゴール。同点。そのまま試合終了。
非常に見ごたえのあるエキサイティングな試合だった。
日本の課題は、相手のサイド攻撃をどう封じ込めるか。クロスを出させない守備ができれば残り2試合勝利できる。
アメリカの課題は、守備。2度もフリーでゴールを許した。
試合結果 ブラジル戦 3月2日
スコアと得点者
スコア |
3-1 〇 |
得点者 |
籾木、小林、 長谷川 |
試合評価
検証ポイント |
寸評 |
経験値の低さをどう克服したか |
若手登用だったのでよく耐えて失点1で乗り切ったのは立派。ただ、W杯本番の決勝Tで使うのは無理。 |
先制されると負けるジンクスが破れたか |
先制失点どころか、ここ1年の強豪国(オールトラリア除く)との対戦で初先制点は立派。しかも追加点あり。 |
守備力アップ (1失点以内) |
下降気味のブラジル相手とはいえ、若手主体で見事1失点に抑え込んだのは立派。 |
攻撃力アップ (先制されても追いつく) |
同点にされた後の2ゴールは素晴らしい。USA戦でも枠内シュート2本で2得点。この試合でも6本中3本決めた。決定力がすごい。欲を言えば、相手DFを背負っても得点できるようになればW杯4強が見えてくる。 |
シュート本数 |
日本 11/22 ブラジル |
枠内シュート本数 |
日本 6/6 ブラジル |
マッチレポート
両チームとも 4-4-2。
なでしこの先発メンバーは、
GK 山根
DFは山根から見て左から 有吉、大賀、南、宮川
中盤の底に中島、宇津木
2列目は阪口、籾木
ツートップが横山、池尻
- 互いに攻守を繰り返す展開が続く。ブラジルが押し気味であったが、44分、中島からの絶妙の横パスを受けたフリーの籾木がループシュートで先制点。そのまま前半終了。
- ブラジルが猛攻を仕掛け、なでしこは防戦一方。後半12分、ブラジル同点ゴール。その後もブラジルの猛攻が続くが、鮫島・長谷川・杉田を投入し徐々に流れが変わる。後半35分、籾木からのクロスをフリーの小林がヘディングで得点。日本リード。
- やや疲れの見えるブラジルに対し後半40分、長谷川が相手DFを振り切りゴール。3-1。41分、山根がパンチングで失点を防ぐ。ブラジルの攻撃をかわし試合終了。
若手主体の日本がブラジル相手に1失点で凌いだのは立派。これならワールドカップ・グループステージのアルゼンチンやスコットランド戦で途中投入できそう。アメリカ戦での課題であったサイド攻撃からの失点がなかったのは幸い。
攻撃に関しては、今大会5点中4点がフリーでの得点。相手のプレッシャーを受けて得点できないシーンがいくつかありその当たりを改善できればイングランド戦も勝利するだろう。
試合結果 イングランド戦 3月5日
スコアと得点者
スコア |
0-3 ● |
得点者 |
0 |
試合評価
検証ポイント |
寸評 |
経験値の低さをどう克服したか |
相手の動きについていけないプレーが目立った。初対面では仕方ないのかな?危ない場面での体を張ったプレーが少なかった。経験値の低さを何かで補おうという意識に欠けていたのではないか? |
先制されると負けるジンクスが破れたか |
1点は仕方ないとしても2点目、3点目はいただけない。精神的なもろさや気持ちを切り替えられない未熟さを露呈。 |
守備力アップ (1失点以内) |
熊谷を欠き評価不能。若いメンバーの守備力がはっきりと理解できた点が唯一の収穫。 |
攻撃力アップ (先制されても追いつく) |
前半イングランドのプレスが多少あり、思うように組み立てられなかった。後半は引いた相手に対し再三攻撃を仕掛けるが、決めきれなかた。固いDF陣に対して攻撃力がアップしているとは言い難い。 |
イングランドには負けないという自信がついた |
もし相手に手の内を見せずにどこまで守り切れるか、という意識で戦ったとしても若手にはかなりのショック。自信喪失にならないことを切望。 |
シュート本数 |
日本 12/10 イングランド |
枠内シュート本数 |
日本 4/4 イングランド |
マッチレポート
両チームとも 4-4-2。
なでしこの先発メンバーは、
GK 山根
DFは山根から見て左から鮫島、大賀、南、清水
中盤の底に杉田、松原
2列目は長谷川、阪口
ツートップが遠藤、池尻
若手主体で臨んだなでしこは前半12分、23分、30分にイングランドのスピードのあるシンプルな攻撃に守備陣が対応できず立て続けに失点。ブラジル戦の総合評価でもコメントしたが強豪相手には若手で臨むのは自殺行為。若手では通用しないというのがやっとわかった点は収穫。
ただ、高倉監督は手を打ちを見せないゲームをしたかったのではないかとも考えられる。
後半意識して?ペースダウンしたイングランドに対して終始押し気味に展開したが得点に至らず。
「後半はなでしこらしさを出せた」と言う解説者やシュートをパンチングで外され苦笑している光景が映ったが、1998年フランスワールドカップの城彰二への水かけ事件が頭によぎった。全体的に、粘り強さ、厳しさ、日本代表としての使命感を欠くプレーが目立った。その点をやんわりと指摘した澤さんはさすがだった。
順位表
順 位 |
チーム名 |
勝 点 |
勝 |
引 |
敗 |
得 点 |
失 点 |
得失 点 |
|
アメリカ |
5 |
1 |
2 |
0 |
5 |
4 |
+1 |
|
ブラジル |
0 |
0 |
0 |
3 |
2 |
6 |
-4 |
|
イングランド |
7 |
2 |
1 |
0 |
7 |
3 |
+4 |
|
日本 |
4 |
1 |
1 |
1 |
5 |
6 |
-1 |
なでしこジャパン2019総合評価(3試合)
検証ポイント |
寸評 |
経験値の低さをどう克服したか |
イングランド戦では逆に経験値の低さを露呈しすぎ。若手DFは相当のショックのハズ。 |
先制されると負けるジンクスが破れたか |
USA戦で2度も追いついた粘り強さは++評価。イングランド戦で先制されDF陣がボロボロにされたが熊谷抜きでの戦いだったのが救い。どちらがなでしこの現在地なのかの判断は4月のフランスとドイツの試合を見てからにしよう。 |
守備力はアップしたか ・4失点以内 ・前半に先制点を与えない |
若手主体という事で評価できないが6失点の意味する事は「若手で強豪国との対戦するのは無理」と分かった。 昨年7末~8月初のTournament of Nationsでは8失点(熊谷抜き)で内4失点はUSA戦。それを考えると若手の力がかなり伸びているとは言い難い。 |
攻撃力はアップしたか ・先制されても追いつく ・4点以上 |
昨年7末~8月初のTournament of Nationsの得点より2点上回ったので評価できる。下位チームには負けない(ブラジル)というジンクスは続いているのは心強い。 ただ、相手を崩して得点できたのは1点だけ。イングランド戦の後半を見ても攻撃力がアップしたとは言い切れない。 忘れてはならないのは、運も味方したという点。3戦 (イングランド戦の後半を除く)ともシュート数は相手チームが圧倒している。4月のフランス戦、ドイツ戦を期待しよう。 |
イングランドには負けないという自信がついたか |
特にDFや守備的MFの若手は自信喪失にならないか心配。 |
選手選考は正かったか |
「 東京五輪に向けて若手に若手に経験値を積んでもらう」視点では100%正しい。「ワールドカップでなでしことしてのプライドと誇りを持ってベストの布陣で戦う」視点では選手などの入れ替えが必要と感じた。 |
なでしこジャパン試合結果事前予想(期待値)
2月15日のアメリカ遠征メンバー発表前
予想のベースは私の昨年11月の(第1版)なでしこ代表メンバー
対戦相手 |
スコア |
得点 |
失点 |
得失点 |
アメリカ |
1-2 |
1 |
2 |
-1 |
ブラジル |
2-1 |
2 |
1 |
+1 |
イングランド |
1-1 |
1 |
1 |
0 |
合 計 |
|
4 |
4 |
0 |
期待値:FIFA女子ワールドカップ2019でベスト8以上の成績を十分に期待できる成績
2月15日のアメリカ遠征メンバー発表後
対戦相手 |
スコア |
得点 |
失点 |
得失点 |
アメリカ |
0-2 |
0 |
2 |
-2 |
ブラジル |
1-2 |
1 |
2 |
-1 |
イングランド |
0-1 |
0 |
1 |
-1 |
合 計 |
|
1 |
5 |
-4 |
試合結果事前予想の修正理由
- 経験値が更に低くなっている
- 守備力はほとんど変わらないが、攻撃力が低くなった
- チーム力をアップし状況に応じた戦術を試す時期なのに個々の能力(初召集組)を試そうとしている
もし予想通りの結果で大会を終えた後のインタビューで「いい経験になった」というコメントは聞きたくない。少なくても「国際レベルの選手でないことを痛感した」ぐらいのコメントをしてほしい。
なでしこジャパン2019メンバー(今回召集されたワーフドカップ2019に向けたメンバー)にこれ以上とやかく言うつもりはないが、この大会で期待値を超えるパーフォーマンスを発揮してほしい。
試合日程(なでしこジャパン)
2019年2月27日 アメリカ戦
試合開始時間19:05(日本時間28日午前9:05)
試合会場 ペンシルバニア州フィラデルフィア
テレビ放送 BSフジ 日本時間28日午前9:05
2019年3月2日 ブラジル戦
試合開始時間13:00(日本時間3日午前4:00)
試合会場 テネシー州ナッシュビル
テレビ放送 BSフジ 日本時間3日午前4:00
2019年3月5日 イングランド戦
試合開始時間17:25(日本時間6日午前7:25)
試合会場 フロリダ州タンパ
テレビ放送 BSフジ 日本時間6日午前7:25
出場国のデータ
- 世界ランク:FIFAワールドランク(2018年12月発表の最新ランク)
- 2018年度成績:強豪国(当時世界ランク10位以内)との対戦成績
- 以下 2つは2018年11月の国際マッチデー又は直近の招集メンバーをベースに算出
- W杯・五輪経験値:招集されたW杯・五輪経験者の人数比
- 平均年齢:招集メンバーの平均年齢
- 対戦国のカッコ内の数字は最新の世界ランク
アメリカ
世界ランク |
1位 |
2018年度成績 |
5勝2分 |
W杯・五輪経験値 |
48% |
平均年齢 |
27.5 |
直近の試合結果
対戦国 |
試合結果 |
フランス(3) |
1-3 |
スペイン(12) |
1-0 |
ブラジル
世界ランク |
10位 |
2018年度成績 |
1勝3敗 |
W杯・五輪経験値 |
48% |
平均年齢 |
25.4 |
直近の試合結果
対戦国 |
試合結果 |
アメリカ(1) |
1-4 ● |
カナダ(5) |
0-1 ● |
イングランド
世界ランク |
4位 |
2018年度成績 |
2勝2分2敗 |
W杯・五輪経験値 |
35% |
平均年齢 |
25.4 |
直近の試合結果
対戦国 |
試合結果 |
オーストリア(23) |
3-0 〇 |
スウェーデン(9) |
0-2 ● |
日本(なでしこジャパン)
世界ランク |
8位 |
2018年度成績 |
1勝1分5敗 |
W杯・五輪経験値 |
26% |
平均年齢 |
24.1 |
直近の試合結果
対戦国 |
試合結果 |
中国(15) |
1-0 〇 |
ノルウェー(13) |
4-1 〇 |
なでしこジャパン召集メンバー (2月15日午後2:00発表)
2月15日発表の招集メンバー
GK
- 山根恵里奈、池田咲紀子、山下杏也加
DF
- 鮫島彩、有吉佐織、熊谷紗希、三宅史織、清水梨紗、
- 大賀理紗子、市瀬菜々、宮川麻都、南 萌華
MF
- 阪口夢穂、宇津木瑠美、中島依美、坂口萌乃、松原有紗、
- 長谷川唯、杉田妃和、三浦成美
FW
- 横山久美、籾木結花、池尻茉由、小林里歌子、遠藤純
私の昨年11月の(第1版)なでしこ代表メンバー予想
詳しくは知りたい方は、下の紹介記事を参照して下さい。
赤の選手が今回発表とマッチ
選手選考についてのコメントは、FIFA W杯 2019に向けての強豪国の最新情報(下の紹介記事参照)に綴ります。
GK
- 山根恵理奈、山下杏也加、池田咲紀子
DF
- 熊谷紗希、鮫島 彩、有吉佐織、市瀬菜奈、三宅史織、清水梨紗、川村優理、南 萌華
MF
- 川澄奈穂美、中島依美、長谷川 唯、宇津木瑠美、坂口夢穂、猶本 光、永里優季、坂口萌乃
FW
- 横山久美、田中美南、岩淵真奈、菅澤優衣香
まとめ
SheBelievesカップは、ワールドカップやオリンピックに例えれば、ベスト8に残ったチームと戦うような大会である。
従って、なでしこジャパン2019のFIFA女子ワールドカップ2019フランス大会における成績を予想する上で多くのことを語ってくれるに違いない。
ここでは試合結果など最新情報をお伝えするとともになでしこジャパン2018が抱えていた6つの課題がどのように克服されるかが大きな見どころ。その点もお伝えしたい。
頑張れ、なでしこジャパン2019!
なお、2020年度のSheBelievesカップのメンバー・日程・結果はこちら!