世界寿命ランキングでみる健康食品と長寿の因果関係

はじめに 

中国国内の富裕層と同様、香港の富裕層は日本産食品に拘るが、一般の人は中国産の農薬などに汚染された食品を食べている。

一方、私たち日本人は、常日頃から健康意識が高く、鮮度・賞味期限・添加物・栄養成分などに注意しながら食品を選んでいる。加えて自然食品やサプリメントを求めるなど、極めて健康意識が高い。

その私たちが中国食材を口にしている香港人に平均寿命で抜かれてしまった。香港人はどうして日本人より長生きするの? ごく素朴な疑問である。その疑問を抱いた事がキッカケで健康食品と長寿の因果関係を調べた。

健康食品と聞くと「元気で長生きできる」イメージを抱く。発酵食品は長寿の秘訣と言われている。実際はどうなのだろう? こうした疑問を世界寿命ランキングで考察しますのでお付き合いいただければ幸いです。

 

平均寿命と健康寿命

 

平均寿命とは「0歳の平均余命」のこと。つまり、平均寿命が80歳だとしても、今79歳の人が平均であと1年しか生きられないということではない。2017年現在のデータでは、80歳まで生きた場合の平均余命は約10年。つまり90歳まで生きられる。

因みに、世界保健機関(WHO)の『世界保健統計』2019年版によると、2016年の世界の平均寿命は72.0(男性69.8歳、女性74.2歳)。

一方、健康寿命とは「日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間」のこと。

 因みに、2016年度の世界の平均寿命(72・0歳)と健康寿命(63.3歳)の差は8.7歳。

 

平均寿命ランキング(2017年)

 

世界の平均寿命ランキング - 世界経済のネタ帳

 

1位  香港   84.7歳

2位  日本   84.1歳

3位  マカオ 84.0歳

4位  スイス 83.6歳

5位  スペイン 83.3歳

6位  イタリア 83.2歳

7位  シンガポール 82.9歳

8位  ルクセンブルク 82.7歳

9位  韓国  82.6歳

10位  イスラエル 82.6歳

21位  ギリシャ 81.4歳

68位  ブルガリア 74.8歳

92位  ジョージア 73.4歳

 

健康寿命ランキング(2016年)

 

世界の健康寿命ランキング・国別順位、WHO 2018年版

1位 シンガポール 76.2歳

2位 日本 74.8歳(平均寿命より-9.3歳)

3位 スペイン 73.8 

4 位 スイス 73.5 

5 位 フランス 73.4 

6 位 キプロス 73.3 

7 位 カナダ 73.2 

7 位 イタリア 73.2 

9 位 オーストラリア 73.0 

9 位 アイスランド 73.0 

9 位 ノルウェー 73.0 

9 位 韓国 73.0 

21位 ギリシャ 72.0(-9.4)

68位 ブルガリア 66.4(-8.4)

92位 ジョージア 64.9(-8.5)

 

香港はどうして平均寿命が世界一?

 

これまで10数年間、日本は平均寿命ランキングで世界一であったが、2017年度に香港に抜かれてしまった。

日本が長寿国である主な要因としては言われているのは、

  • 国民皆保険制度の普及
  • 日本的食生活

香港はどうなんだろう?

厚労省関係者の話では「2000年に健康促進のプロジェクトを立ち上げ『毎日運動をすると体にいい』のキャッチコピーのもと公園や運動施設などを徹底的に増やしていった。そうした努力が実を結んだとも言えますね」、だそうな。他にも、お茶、漢方薬、喫煙率が低い、などいろいろな意見があるがどれも明確な根拠はない。

なお、香港の健康寿命については、データがないようでランキングに掲載されていません。

ヨーグルトで有名な国の健康寿命はどうなんだろう?

  • ヨーグルト不老長寿説で有名なブルガリア:66.4歳
  • マツォーニという発酵乳が長寿の秘訣と言われるジョージア:64.9歳
  • ダイエットによいギリシャヨーグルトの国、ギリシャ:72.0歳

いずれの国においても発酵食品と長寿の因果関係は特になさそうだ。

こうして見ると「長生きする人がこの地域に多い、この地域では〇〇を食べる、故に〇〇を食べると長生きする」という三段論法を使っているが、科学的検証がされている訳ではない。尚、ヨーグルト不老長寿説の根拠となったデータには年齢詐称があったと言われている。

 

内閣府食品安全委員会の食品に関するメッセージ

 

「健康食品」による健康被害に遭わないように注意しましょうという記事で紹介しましたが、食品安全委員会が平成27年12月に発行した報告書「いわゆる健康食品 について」(http://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.data/kenkosyokuhin_pamphlet.pdf)でメッセージ15として次のように断言している。

  • 健康寿命の延伸(元気で長生き)効果が実証されている食品はない
  • 健康寿命が延伸できる、ことを科学的に実証することは難しい
  • 食品のみならず医薬品を含めても、そのような効果を示している研究はほとんどない
  • また、効果があると期待されているものも、長期間の観察では効果がないことが確認されたり、逆に別の良くない影響がわかったりすることがしばしばある

この「国民へのメッセージ」はいい意味で驚きですね。「健康食品を摂れば元気で長生きできる」と勝手に思い込んでいる私たちがいけないのでしょうか? テレビなどで特定の食材を長寿の秘訣のごとく取り上げるが、どれも科学的に実証されていないことを念頭に置いておきましょうね。

 

まとめ

日本よりも香港の方が長寿?ずっと納得できなかったが、食品安全委員会の同報告書、「いわゆる健康食品 について」のメッセージ2にこう明記されている。”たとえ有害な物質を含む「通常食品」であっても、長年習慣としてきた方法で常識的な量を食べている範囲では健康被害を起こすことはほとんどない”。これで納得。通常食品なら。尚更、神経質にならなくてよさそうだ。

そう言えば、兄弟でフランス旅行に行った時の出来事を思い出した。なんと、2日目から弟だけほとんど声が出なくなった。別にしゃべり過ぎたわけではない。思い当たる節がある。

弟はいつもクリーンルームで働いている。突然、環境が変わったのでノドをやられたとしか考えられない。普段、無菌室で働いているから免疫力が低いのだろう。科学的根拠はないがそれが結論。この事例で香港の長寿に関して更に納得できた。

残念ながら健康食品と長寿の因果関係は立証できていないようだ。ヨーグルトが健康に良いのは間違いないだろうが、当然のことながらそれだけを食べたら健康を害することになる。普通の食品をバランスよく摂るのが一番の健康かもしれない。そしてバランスの取れた生活習慣が長寿の秘訣として締めくくります。