WEリーグと海外女子サッカーリーグの圧倒的な違いは何か?

はじめに

2024年11月13日リライト

本記事を掲載したのは準々決勝で敗退した東京五輪直後の2021年8月21日。その記事で、なでしこジャパン復活への道は次の2つであると綴った。

  • 外国から代表選手を多数招聘して国内リーグを強くする
  • 外国のトップリーグに多くの日本人選手を送り出す

現在はどうだろうか?

①に関しては、外国からの代表クラスの選手流入はほぼゼロ。確かに、日本人若手の成長は著しいが、全体的にはWEリーグのレベルが低下していると言える。

②に関しては、東京五輪当時よりも明らかに代表クラスの海外移籍が進んでいる(東京五輪当時の海外でプレーする日本代表選手は6人、2024年11月時点では16人)。

ただ、現時点ではなでしこジャパンは東京五輪の成績を越えていない(2023年W杯もパリ五輪もベスト東京五輪と同じベスト8止まり)ので、なでしこジャパンの評価はあまり変わっていません。

本記事のテーマである「WEリーグと海外女子サッカーリーグの圧倒的な違い」に関して皆さんはすでに察していると思いますが、その違いを欧米の強豪リーグと比較して説明するとともに「WEリーグ成長の道」に関しての私見を皆さんとシェアしたいと思います。

なお、こちらの記事もご覧いただければ幸いです。

 

WEリーグと欧米の強豪リーグの違い ①

下記の表をご覧ください。

現代表選手の国内リーグ所属率

欧米の5大(強豪)リーグと言えば、米NWSL、イングランド、スペイン、ドイツ、フランスの1部リーグ。

5大リーグでは、自国のリーグでプレーする代表選手の割合が非常に高い。一方、日本は、スウェーデン、オランダ、オーストラリアなどと同様で、代表選手の大半が国外でプレーしている。具体的には、

  • アメリカ 84%
  • イングランド 76%
  • スペイン 76%
  • ドイツ 78%
  • フランス 50%
  • 日本 26%
  • スウェーデン 17%
  • オランダ 19%
  • オーストラリア 17%

なお、カナダにはプロの女子サッカーリーグはありません。

5大リーグ所属率

スウェーデン、オランダ、オーストラリアとWEリーグの違いはと言うと、5大リーグでプレーする代表選手の割合と言える。具体的には、

  • 日本 47%
  • スウェーデン 61%
  • オランダ 81%
  • オーストラリア 78%

 

WEリーグと欧米の強豪リーグの違い ②

主要リーグにおける外国籍現代表選手数を見てみましょう。

外国籍代表選手数

5大リーグでは、アメリカ 36、イングランド 68、スペイン 23、ドイツ 21、フランス 18。

一方、日本 1(INAC神戸のジャマイカ代表Vyan Sampsonのみ)、スウェーデン 12、オランダ 2、オーストラリア 0。

スウェーデンは比較的外国籍の代表選手が多いが、内訳は、アイスランド4、デンマーク3、日本2、豪・ノルウェー・スイス各1であり、どちらかと言えば2番手レベルの代表選手が多い。イタリアも同様である。

 

WEリーグと欧米の強豪リーグの違い ③

もうお分かりでしょうが、ワールドクラスの選手の殆どはアメリカ、イングランド、スペインのリーグでプレーしている。

市場価値200K€以上の選手80人のリーグ内訳

イングランド 23、スペイン 18、米NWSL 13、フランス 12、ドイツ 10、イタリア 4

もちろん、日本、スウェーデン、オランダ、オーストラリアのリーグには市場価値200K€以上の選手はいません。

市場価値200K€以上の選手のクラブ別内訳

市場価値200K€の選手が3名以上所属するチームはわずか11クラブで、具体的には下記の表の通り。

なお、米NWSLではこれまでチーム間格差を抑えていた「ドラフト制度」の完全廃止サラリーキャップ制による個人年俸上限値20万ドルが引上げられるので、今後市場価値の高い選手は増えるでしょう。

また、NWSLの2024シーズン観客動員数は11,000人以上で他のリーグを圧倒しているので、さらにワールドクラスの選手にとって魅力的なリーグになるでしょう。

 

WEリーグ成長の道

上記の強豪国の実態から言えることは、

  • WEリーグには海外代表選手がほぼ皆無
  • 5大リーグでプレーする選手は9人(47%)でまだまだ多くはない

よって、WEリーグ成長の道は2つある。

  • 5大リーグでプレーする選手数が少なくともスウェーデンと同等の12人、願わくは15人にする為に、若手の成長をより促進する
  • これまでの支援制度の見直しで外国籍選手を増やす

ただ、外国籍を増やすと言ってもこのままではワールドクラスの選手期待できない点は既に証明済。

支援制度の見直し

WEリーグでは外国籍選手受け入れ支援制度がある。ただ、その条件はほぼほぼワールドクラスの選手が対象となっているので「日本の女子プロリーグを活性化し、日本女子サッカーの強化と世界一のリーグ達成に寄与する」と言う目的に全く貢献していない。

であるならば、中堅国の代表選手や20歳前後の若手有望株を対象とした制度に変更すべきである。

また、クラブへの補助金は年間最大1000万円だが、年棒の20%しか補助しない。年間最大1000万円は変えなくても良いが、年俸の補助は最大50%までにアップすべきだ。

そして平均で年俸400万円くらいにすべき(WEリーガーの平均年俸は300万円)。そうなると各チーム1、000万円の負担で5人くらいの外国籍選手を抱えることができる。そうなれば、WEリーグの活性化は間違いないでしょう。 

さすればWEリーグの未来はどうなる?

NWSLの平均年俸が23,301€(約400万円弱)だからWEリーグは海外中堅国の代表選手や若手有望株には非常に魅力的なリーグに映るでしょう。

さらに、最近、WEリーグを経て海外へ移籍した日本の若手選手(浜野まいか、松窪真心、藤野あおば、小山史乃観)やFAアカデミー福島から直接海外へ渡った谷川萌々子、古賀塔子などがおおいに活躍している。

これは、若くても「WEで実績を残せば海外の強豪チームへ移籍できる」ということの証明である。この点は、海外の若手選手にとってWEリーグが魅力的に映る理由となるでしょう。

 

おわりに

WEリーグと女子サッカー5大リーグとの圧倒的な違いは、明らかに、外国籍選手数と選手レベルの差が余りのも大きい点であることが分かった。

また、ワールドクラスの選手をWEリーグに招聘するにしても今の支援制度(例えばFIFAランキング常時上位国籍の選手などが条件)ではどうにもならないこともわかった。

WEリーグ」の空洞化が進んでいる。観客動員数も目標の30%程度だ。WEリーグ現状打破の為にどんな手を打つのか興味深く見守りたいが、1ファンとして外国籍選手の招聘を積極的に進めてもらいたい。

その為には現在の支援制度の抜本的改革が必須。年間数人程度の招聘では活性化には繋がらないし、日本人若手のライバルにもなりえない。

仮に20人程度の外国籍選手を招聘するには最大4,000万円の補助が必要になるが、WEリーグ予算の4%だ。どうにかなるはず。そうなれば、大いに盛り上がりWEリーグの活性化に大いに貢献するのではないでしょうか?

そして「WEリーグは世界で唯一の若手成長の舞台」をうたい文句にして、5大リーグへのステップアップリーグとして世界にアピールすべきでしょう。

このままでは5大リーグに近づくどころか増々離されてしまいます。欧米のリーグと同じ土俵で上を目指すのは止めて、WEリーグの目的や位置づけの見直しを行い「若手の成長の為のリーグ」に変革する時が来たのではないでしょうか?

 

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