W杯で露呈した保持率と勝利の希薄な関係、保持率アップは最優先課題?

カタールW杯強豪国との対戦から得た経験から、「ボール保持率を高め試合をコントロールできるようにならなければ上を目指せない」と感じ、第2次森保ジャパンは新たな取り組みにチャレンジ。

チャレンジすることは素晴らしいこと。ただ、代表の活動時間には限りがある。ボール保持率を高めれば上を目指せるのでしょうか? そこでボール保持率と勝利の関係をカタールW杯グループ・リーグ全64試合のスタッツで調べた。

皆さんは、ボール保持率と勝利の関係性をどのように感じられていますか?

私の感覚では、

  • ボール保持率の高いチームの勝率は45
  • ボール保持率が低いチームの勝率は30
  • ボール保持率が関係なく引き分けは25%

それでは調査結果を皆さんとシェアしますのでよろしくお願いします。

 

ボール保持率 調査概要

ボール保持率と勝利の関係性を深掘りする為、2022カタールW杯全64試合のデータを使って次の4区分で関係性を調査。

① ボール保持率が1~10%上回ったチームの勝率

② ボール保持率が11~20%上回ったチームの勝率

③ ボール保持率が21~30%上回ったチームの勝率

④ ボール保持率が31%~上回ったチームの勝率

調査前の個人的感覚ですが、①と②に関してはボール保持率の高いチームの勝率はそれ程でもないが、③と④ならかなりの確率でボール保持率の高いチームが勝利したことでしょう。

 

ボール保持率 調査結果

2022カタールW杯の全64試合のデータを使って勝率の高かったチームから見た勝敗及び得失点分析結果をまとめた表です。

勝敗

  • ボール保持率が0~10%高いチームの勝率は35%(同率の保持率の3試合を含む)。ほぼ五分五分ですね
  • ボール保持率が11~20%高いチームの勝率は42%
  • ボール保持率が21~30%高いチームの勝率は20%。W杯の保持率には中立の時間が平均12%含まれている。これを除くと保持率21~30%は中立なしの場合の27%~36%に相当。保持率の割には驚くほど低い勝率ですね
  • ボール保持率が31%以上高いチームの勝率は40%。ほぼ7割以上ボールを保持しているのに勝率で上回れない。日本が頑張ったからこうなった?

酷いですね。なお、日本の2試合を除く8試合の内訳は、

  • オーストラリア 1-0 デンマーク 保持率24%-60% 差36ポイント
  • イングランド 6-2 イラン 72%-19% 差51
  • スペイン 7-0 コスタリカ 74%-17% 差57
  • コスタリカ 2-4 ドイツ 27%-60% 差33
  • アルゼンチン 1-2 サウジアラビア 64%-24% 差40
  • ポーランド 0-2 アルゼンチン 24%-67% 差43
  • モロッコ 0-0 スペイン 22%-68% 差46
  • モロッコ 1-0 ポルトガル 22%-65% 差53

保持率が高くても低くても勝利数はほとんど変わりませんでしたが、やや保持率の低いチームが優勢という結果でした。

得失点

やや保持率の高いチームの得点が多かったですね。スペイン対コスタリカの7-0が31%以上の得点を大きく上げましたね。

アルゼンチンとブラジルはしたたか

ボール保持率が低いチームにはアルゼンチンとフランスの決勝トーナメントでの4試合を含んでいる。彼らは疲労を考慮してボールを持たせるサッカーで試合をコントロールしていると察する。

さらに意図的に保持率を低くして攻撃側の守備が甘くなる機会を待つ。そして隙あらばボールを奪って一気にゴールを狙う。特に準決勝戦のボール保持率はアルゼンチン34%(クロアチア54%)、フランス34%(モロッコ55%)。

ボール保持率の低いチームはこうした狙いを持って戦っているからと推察。上記の表を見れば保持率の高いチームが得点と同じくらい失点している。ボール保持チームの失点のリスクも高いことがよく分かる。

つまり、攻撃時でも守備時と同じくらい失点のリスクがあることを彼らは知っているのでしょう。ある程度レベルの高いチーム同士の戦いでは「攻撃は最大の防御ではない」とうことですね。

 

ボール保持率アップに拘るな!

ご覧いただいたようにボール保持率と勝利・得点の関連性は薄い。ボール保持率が低くてもW杯で結果を残した国は日本だけではない。2022カタールW杯ベスト4のモロッコもそうだ。

モロッコの保持率は平均35%

実際、モロッコのグループFでのボール保持率は、クロアチア戦37%(相手57%)、ベルギー戦32%(56%)、カナダ戦36%(52%)。全て相手が高かった。

モロッコは決勝トーナメントでも同じで、ラウンド16 スペイン戦22%(68%)、準々決勝 ポルトガル戦22%(65%)、3位決定戦 クロアチア戦45%(45%)。

唯一の例外は、2-0で負けた準決勝フランス戦の55%(34%)。皮肉なことにボール保持率で初めて相手を上回ったフランス戦で負けてしまった。

スペインはモロッコの真逆

一方、モロッコの真逆がスペイン。決勝トーナメントも含めて全4試合で相手チームをボール保持率で大きく上回った。ドイツ戦でさえボール保持率56%、ドイツは33%。ボール保持率を高めても勝利につながりませんね。

日本の平均は30%

  • ドイツ戦 1-2勝 65%-22% 差-43
  • コスタリカ戦 0-1敗 48%-39% 差+9
  • スペイン 2-1勝 14%-78% 差-64
  • クロアチア戦 1-1 35%-51% 差-16

日本の5得点のうち、ビルドアップからの得点はドイツ戦三笘の折り返しからの1点とスペイン戦の三笘の1mmからの得点。ただ、どちらかと言えば、個人技でもぎ取った得点で、純粋にボールを繋いで相手を崩しての得点ではない。

第2次森保ジャパンの初陣では強豪チームに対してもボール保持率を上げることにチャレンジ。確かにハリルホジッチ氏が強く求めたデュエル勝率などを上げ、少なくとも+10ポイント保持率を高める必要はある(W杯平均は44%、日本は30%)。

だだ、それがレベルの高いチームに引き分け以上の結果を残して「上を目指す」ための最優先課題なのでしょうか?

 

上を目指す為の重要な取り組みは?

新生日本代表に重要と思われる取り組みを素人目でまとめてみました。すでに取り組んでいる課題でしょうが、さらに磨きをかけてほしいのでリストアップしました。

堅固な守備網

ワールドカップ勝利には固い守備が必須なことはモロッコが証明している(モロッコのグループF失点は1、そしてラウンド16と準々決勝戦の失点は0)。

このことは決勝戦を戦ったアルゼンチンとフランスにも言える。相手チームよりボール保持率が低いが勝利した試合は両チーム合わせて14試合中4試合(PK含む)ある。50%を切った試合は他に3試合。

決してボール保持に頼った試合ばかりではない。強固な守備網があるから相手にボールを持たせても試合をコントロールできる。

森保監督が言う「良い守備から良い攻撃」は素晴らしいコンセプトと思う。個人的には、「良い守備」に相手にボールを持たせて守りきる堅固な守備網構築を加えたい。

縦への速い攻撃

狙い目は攻撃中の相手からボールを奪った瞬間やミスした瞬間。その時は相手の守備がややおろそかになっているのでビルドアップよりカウンター攻撃が有効。

一方、日本代表はボールロストを恐れて丁寧にショートパスをつなぐビルドアップ。縦へのスピードが遅い。その間、相手は守備を固めるので得点するのは難しくなる。リスクを恐れずに縦への速い攻撃を磨いて欲しい。

得点までのパス本数を減らす

縦への速い攻撃を実践すれば自ずとシュートまでのパス本数は減る。因みに、2014年ワールドカップにおいて「得点までのパス本数」の研究結果がある。全試合で生まれたゴールは171点でパス本数の内訳は、

0本22得点、1本33得点、2本32得点、3本21得点、4本14得点、5本以上49得点。パス本数4本以内が71%。その内、0本・1本からの得点はPK・CK・FKなど。ビルドアップからの得点は最大で32%だが、パス2本~4本からの得点はおよそ39%

セットプレーや少ないパスでシュートまで持って行くことにもっと取り組んで欲しい。

偽ビルドアップ(意識的にチャレンジ)

ボールを奪取しても相手に隙がない時は、日本代表が得意とするパスワークで得点を狙うふりをして体力温存しながら時間を進める偽ビルドアップを提案したい。これだけで保持率は5%くらいアップするでしょう。

偽ビルドアップは得点を狙うよりも失点のリスクを減らすセーフティファーストの攻撃。よって、リスクを減らすための横パスやバックパス大歓迎。もちろん、その間に相手に隙が生じればゴールを狙う。

以上の4点が日本代表W杯をベスト4へ導くための最優先課題と考えます。もちろん保持率を上げビルドアップを改善する必要はあるが、最優先課題ではないと考える。

 

おわりに

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カタールW杯で露呈した保持率と勝利の希薄な関係、皆さんはどう感じたでしょうか?

冒頭の私の感覚である、

  • ボール保持率の高いチームの勝率は45% → 34%
  • ボール保持率が低いチームの勝率は30% → 42%
  • ボール保持率に関係なく引き分けは25% → 22%

どれも当たりませんでしたね。

因みに、ロシアワールドカップの保持率と勝利の関係も同様の結果で、特に、決勝Tでは(たまたまでしょうが)ボール保持率40%未満のチームの負けはありませんでした。

ボール保持率の高いチームは優勢に試合を展開できるが、保持率が低くても保持率の高いチームと同等あるいはそれ以上の勝率を上げることができる。これはW杯に限らず、今季のJリーグでもその傾向が散見できますね。

いずれにせよ、2026北中米W杯ベスト4が目標なら、代表活動の時間は限られている。尚更、勝利に結びつく確率がより高くなる課題を選んでチャレンジしてもらいたい。もちろん、明確な戦術を立ててそれに適したメンバーの選考も期待したい。

偽サイドバック採用リーグレベル発言など、本当に緻密な分析や情報収集したのだろうか? 不安を覚えるが、日本代表の取り組みを見守っていくことにします。

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