はじめに
森保監督は6月親善試合前の会見で「2026年の北中米W杯に向けて(選手の意向を汲んで)ベスト8という目標ではなく、優勝、世界一を目指しながらレベルアップをしていく」と高い目標を掲げた。
そして、2023年6月(エルサルバドル、ペルー)と9月(ドイツ、トルコ)の国際親善試合に4連勝(18得点4失点)、素晴らしいパーフォーマンスを発揮。
私たちファンも何となく「今の日本代表ならやれるんじゃないか」と思ってしまうが、冷静になって考えてみた。
- ベスト8の壁とは具体的に何なのか?
- どのくらい高いのか?
- 壁を超えるのに何が必要なのか?
そのヒントを求めて2022W杯ベスト8に輝いた代表選手を分析。その結果を皆さんとシェしたいと思います。
なお、こちらの最新記事もご覧いただければ幸いです。
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W杯ベスト8選手と所属クラブ
2022FIFAワールドカップカタール大会でドイツ・スペインを破り4度目の決勝トーナメント進出を果たしたが、クロアチアにPKの末に負けて、またしても「ベスト8の壁」を超えられなかった。
そのベスト8の壁の原因に国民性・教育・メンタリティなどの違いを語る識者や戦術・システムを語る識者もいる。部分的には正しいかも知れないが、多くは選手の力不足が原因。従って、ベスト8の壁は個人の問題として捉えたい。
そこで主にベスト8に進出した2023W杯選手と所属クラブに着目。
分析結果①
年齢・キャップ・FIFAランクなどを表にしたが、FIFランク以外、チーム間で大した違いはなかった。
分析結果②
5大リーグや強豪クラブ所属の選手が非常に多い(クラブランキングはW杯直前の10月末ランキング)。なお、モロッコと日本に関しては次の見出しで語ります。
モロッコを除くと、
- Top100のクラブでプレーする選手は22人以上
- Top50のクラブではクロアチアを除くと19名以上
- Top15のクラブではアルゼンチン・クロアチアを除くと13名以上
分析結果③
クロアチアは7チーム比でやや見劣りするが、PK戦に強かった(2018W杯準優勝の時もR16と準々決勝でPK勝)ことが3位に入った大きな要因。これも実力。
2022W杯ベスト8進出チーム比較
日本とモロッコの違い
ここ20年W杯予選敗退のほうが多かったモロッコがいきなりベスト4。どうして?それを調べる上で日本に合わせてベスト16までの成績(4戦)で比較。
モロッコの2022W杯メンバー
モロッコと日本の比較一覧
違い①
W杯ベスト8常連チームと比べたら両チームともかなり少なかったが、日本はTop100が11人、Top50が7人でモロッコ(それぞれ10人、3人)よりも多かった。
違い②
モロッコの失点は1、日本の失点は4。得点差がわずか1を考えると、モロッコは守備力で日本を上回った。尚、モロッコは準々決勝進出した8チームで最少失点。
違い③
市場価値(MV)で見てみよう。クロアチアGK陣平均は日本GK陣の8倍、DF陣では日本より3倍高かった。特にDF陣3名(ハキミ65、アゲルド25、マズラウィ25)のMVは計115M€で日本のDF陣上位3名38M€を圧倒。
違い④
違い③と同じだが、Top15クラブ所属DFはモロッコ3人、日本はわずか1人(冨安)
違いを総括すると、攻撃面で大きな差はなかったが、守備面で差があった。W杯4位のクロアチアとラウンド16敗退の日本の決定的な差は守備力。
モロッコは地力で4位になったのか?
ただ、モロッコは地力で4位になったとは言い難い。ビッグクラブ所属選手比でモロッコは他のベスト8チームと比べて明らかに劣っていた。ただ、素晴らしい守備と運に恵まれたと言う方が適切でしょう。
その証拠にW杯後親善試合でブラジルに勝利しが、FIFAランキング65位前後の南アフリカにネイションズカップ予選で2-1負け。
ベスト8の壁を破る条件
モロッコのような例はあるが、「ベスト8になるにはTop100に20人以上、Top15に10人以上の代表メンバーが必要」のようだ。仮にそうでなくてもモロッコのように強力な守備陣と運があればベスト8の可能性はある。
強豪クラブ所属日本代表は何人?
それでは強豪クラブ所属日本代表は何人いるのか?2023年9月28日現在では、
- 5大リーグ&Top15クラブ 1名(冨安)
- 5大リーグ&Top50クラブ 6名(遠藤・久保・鎌田・三苫・堂安)
- 5大リーグ外&Top50クラブ 2名(上田・守田)
- 5大リーグ&Top51~100クラブ 1名(南野)
- 5大リーグ外&Top51~100クラブ 7名(古橋・前田・旗手・岩田・小林・金子・菅原)
ベスト8の壁
Top15クラブ所属10人を目標とするなら現時点で9人足りない。2026W杯までにこの目標を達成するには、現在5大リーグTop100クラブ所属選手全員がTop15クラブにステップアップしなければならないが、レギュラー確保はもっと厳しくなる。
これこそが日本代表選手に立ちはだかるベスト8の壁。この壁を破るべく日本代表選手に求めているのが「個の成長」。
なお、クラブ世界ランキングに関してはこちらの記事をどうぞ!
高い目標を与えて個の成長を刺激
欧州中小クラブでレギュラーとして活躍したら日本代表に呼ばれる、そんな時代は過ぎた。お分かり頂いたようにこの程度では地力でのW杯ベスト8はあり得ない。
当然のことだが、ベスト8には「個の成長」が求められるが、達成度を測るのは難しい。そこでとんでもない「個の成長」目標(=W杯選考基準)を宣言して個の成長を刺激したい。そこで目標を下記のとおり設定。
- 5大リーグ加盟クラブでプレー
- Top100クラブでプレー
- レギュラー
- 得点関与率で合格基準クリアー
最初の3つはこれまでの内容からご理解いただけると思うが、4つめの得点関与率は日本代表FWの決定力不足を補完するもの。
絶対的CF不在の日本代表にとって、得点はCFに頼るのではなく、みんなでたたき出せばよい。となると、MF陣やDF陣にも得点関与能力が求められる。
ワールドクラスの選手を対象にリーグ戦通算実績でポジション別の得点関与率世界基準を設定。しかし、5大リーグでその基準を達成するのはかなり厳しい。
そこで(日本代表向けに)合格基準を設定。上記の4つ基準をクリアーすれば自動的に代表招集(W杯招集)すると宣言しても良いのではないか?
現時点で4つともクリアーしているは5大リーグ選手は三苫、南野、鎌田。今季実績限定で伊東と大活躍中の久保が加わる。遠藤は移籍直後、昨季の実績が世界基準をクリアーしているので当面は自動召集扱い。
余談だが、冨安選手は守備職人。サイドの選手は得点関与率が求められるが、その点はデータが示す通りなので終盤の守備固めに起用されている。しかし、CBなら本領を存分に発揮できるのでワールドクラスになり得る。
なお、日本代表の得点関与率に関してはこちらをどうぞ!
スコットランドリーグレベルに関する話題はいまだ消え去っていないようだが、リーグレベルを自動召集条件の1つと認めるなら、5大リーグ外やTop100外の選手をより厳しく評価すべきだ。
その一方で、4つの条件がクリアーできていなくても3つの条件を満たしていれば、優先的に招集すればモチベーションの維持につながる。
なお、スコットランドリーグレベルに関してはこちらの記事をどうぞ!
おわりに
分析しながら悟ったのは「ベスト8の壁は結果からすれば低いが、実は非常に高い」。さらに「4つの基準はベスト8になる必要条件で十分条件ではない」こと。
ドイツやスペインは4つの基準を十分に満たしていたが、グループリーグで敗退。十分条件でない典型的な例。
一方、モロッコのような例もある。戦力的に劣っていてもGKとDF陣で4つの条件をクリアーする選手が4人いれば日本代表のベスト8もあり得るが、それよりもより多くの選手に4条件をクリアーして地力でベスト8を掴んでもらいたい。
必ずしもその努力が報われるわけではないが、W杯で新たな歴史を刻む為に、そして何より自分自身のために、最大限努力して私たちサッカーファンい新しい景色を見せてほしい。
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