はじめに
欧州1部リーグや5大リーグの2部でプレーする主な日本人サッカー選手はおよそ75名。それに加えてJリーグを経ずに欧州クラブへ移籍した選手が4~5名います。
欧州移籍で成功する選手とそうでない選手、その決定的要因を知りたくて日本人欧州組のサッカー歴などを調査。
Jリーグ実績、移籍時の年齢、移籍前評価(市場価値)は成功に関係しているのでしょうか? その決定的な要因(決め手)は何でしょうか?
本記事ではデータを紹介しながら分析結果をシェアしたいと思います。さらに、Jリーグを経ずに欧州へ移籍した選手に関しても考察しましたでよろしくお願いします。
調査対象選手一覧
調査対象選手は、
- 欧州でプレーする市場価値上位50名の選手
- Jリーグを経ずに欧州移籍した12名の選手
3つの視点で分析
① 欧州移籍年齢
移籍年齢は成功(移籍後の市場価値アップ)に関係しているのでしょうか?
3グループ(A:21歳までに移籍、B:22歳~24歳に移籍、C:25歳以降に移籍)に分けて比較すると、
- 移籍1年後:市場価値(MV)に大きな差はないが、Aグループがややリード(久保の影響)
- 移籍2年後:Bグループの市場価値がAとCグループに大差(三笘の影響)
- 移籍3年後:その差がさらに開く一方で、Aクループの市場価値が3グループ中最も低くなる
22歳から24歳の移籍が良さそう。ただ、現在のMVが10M€以上のTop 15名限定では、グループAが8名(20名中)、Bが3名(14名中)、そしてCの25歳以降に移籍した選手が4名(16名中)なので、移籍が早いほど大成功しやすい。ただ、成長が早くなるとは言い切れない。
② 移籍前市場価値(事前評価)
移籍直前の市場価値(MV)が高いほど成功しやすいのでしょうか?
3グループ(A:1.5M€以上、B:1.0M€~1.5M€、C:1.0M€未満)に分けて比較すると移籍前のMVと移籍後のMVは関係しているように見える。
Aグループは1年後に6.1倍の大幅アップとなっているが、久保選手を除けば3.1倍。アップ率は1.8倍。一方、Cグループのアップ率は2.0倍。Bグループは1.4倍。
よって、移籍前後のMV関係性に関しては、市場価値アップ額でみれば関係しているが、アップ率ではそうとは言えない。
なお、現在のMVが10M€以上の15名の内訳は、グループAが4名(9名中)、Bが3名(16名中)、そしてCの移籍前MV1M€未満だった選手は意外と多く8名(25名中)。
③ Jリーグ出場時間
Jリーグ実績は海外移籍後の活躍に関係しているのでしょうか?
当然ではあるが、移籍年齢が上がるほどJリーグ出場時間は多い。そして移籍直前の市場価値(選手評価)もおおむね高い。
なお、出場時間が少ない(年齢が若い)ほど市場価値は上がるが、市場価値は若いほど高くなるので、それを差し引けば、Jリーグ実績は移籍後の活躍にあまり関係していないと言える。
決定的な要因は?
3つの視点(移籍年齢、移籍前評価、Jリーグ実績)から海外移籍選手の成功を分析したが、3点とも決定的な要因ではなかった。ただ、移籍が早いほど大成功しやすい傾向はあるが・・・。
そこで、意地になってもう一つの視点で実態を分析。
現在市場価値を3グループ(A:10M€以上、B:2M€~10M€、C:2M€未満)に分けて比較すると、
Aグループの選手の移籍前MVは1.1M€でBやCグループの選手とあまり変わらない(移籍前の評価はほぼ同じ)が、Aグループの3年後MVは突出して高い。一方、CグループのMVは移籍前と比べて半減している。明らかに大きな違いがある。
ということで、成功(市場価値アップ)を大きく左右する決定的な要因は見つからなかった。ただ、明白なのは成功する選手の大多数は2年後市場価値が2倍以上となっている(Aグループ15名中12名、Bは14名中9名、Cは14名中4名)。
つまり、成功するかどうかは欧州移籍後2年経てばほぼ分かると言える。
なお、主な選手の移籍前~移籍4年後までの市場価値推移グラフもご覧ください。
10M€以上
2~10M€
1~2M€
Jリーグを経ずに欧州へ移籍した選手
2017年以降の移籍では10名(漏れ等についてはご容赦ください)。
この内、アペルカンプ真大と長田 澪は高校前に移住、久保建英と同様、例外とみるべきでしょう。
そうなると、まさしく、識者の言う通りで、Jリーグを経ずに海外移籍したケースの成功事例はないのが現実だ。少なくとも、高卒でいきなり海外移籍したからと言ってJリーグでプレーするよりも早く成長できるとは言い難い。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
ポテンシャルの高い高卒リーキーのほとんどはJリーグに加入する。年に20人としましょう。そして数年後、彼らの半数近くが海外移籍するので海外移籍が叶うのは50%(10人)程度。
海外移籍する選手はJリーグ復帰選手を含めてここ5年で100人くらい。そのうち10M€以上が15名、つまり海外移籍選手の15%。
Jリーグ未経験で海外移籍している選手はここ7年で10人。仮に海外移籍で大成功する選手が海外移籍選手の15%とすれば、J未経験10人なら1~2名の選手が大成功すれば成功率はほぼ合致。
つい最近、福田師王がボルシアMGのトップチームに昇格したニュースが飛び込んできた。バイエルンIIの福井太智の現在MVは0.7M€で1年経過後アップ率では現欧州組Top50名の中で3番目に高い。
二人とも上々の滑り出した。J未経験海外移籍選手の中から大成功する選手はいずれ出現するだろう。ということでJリーグ未経験で海外移籍した成功事例がないのは単に母数が少ないからと言いたい。
おわりに
欧州移籍の分析結果、移籍年齢・移籍前評価・Jリーグ実績は海外移籍選手の成功の決定的な要因ではないと分かった。
ポテンシャルの高い選手ばかりなので、むしろ、彼らの成功を妨げる要因が他にあるに違いない。私はそれはサッカー以外の個人の資質とみている。
市場価値Top15 のうち10名の血液はA型。A型は一般的に4割ですが、それよりも67%高い。特に、協調性が高いと言われるA型に選手が割合が多いので、血液型は要因の一つかも知れませんね。
現実的には、決定的要因はいくつかあるだろうが、私は個人の資質の中でも語学力を含む環境適応力が最も重要な要因と考える。それが高いほど、異文化(言葉・生活環境・習慣などに)社会に早く溶け込める。
ただ、サッカー選手としての成功はともかく、海外移籍選手は言葉・生活環境・習慣などの違いを乗り越えることで「人として大きく成長」すると思っています。つまり、海外移籍選手に敗者はいない。
いかがでしたか? 皆さんの考える決定的な要因はなんでしょうか?
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